「情熱を追求して」と若者にエール―ノーベル化学賞受賞のベンジャミン・リスト特任教授がメダルの公式レプリカを寄贈
寳金清博総長(右)にノーベル賞メダル公式レプリカを手渡すベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 広報・渉外担当 長尾美歩)
2021年にノーベル化学賞を受賞した化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD、以下ICReDD)特任教授で北海道大学ユニバーシティプロフェッサーのベンジャミン・リストさん(マックス・プランク石炭研究所長)が8月28日、ノーベル賞メダルの公式レプリカを北海道大学総合博物館に寄贈しました。同日、寄贈式が行われ、リストさんが寳金清博総長にレプリカのメダルを手渡しました。
公式レプリカメダルは、受賞者がノーベル財団の許可を得て3個まで作ることができるといい、リストさんは3つのうちの最初の1つを北大に寄贈しました。公式レプリカは本物とデザインや大きさは同じですが、使用されている金の純度が違うといい、リストさんは「科学者らしく重さを測って比較してみると、レプリカのメダルは本物より20グラム軽かった」と話し、周囲を笑わせました。
リストさんは、ICReDDが設置された2018年から主任研究者として北海道大学で研究をしています。今回の公式レプリカ寄贈の理由についてリストさんは、「ノーベル賞を受賞する前から私を見いだして、声をかけてくれた北海道大学は、研究における『第二の故郷』だと思っています。寄贈は感謝のしるしです」と語りました。また、「私は11歳の時に化学者になろうと決め、以来、化学への情熱だけを追求してきましたが、ノーベル賞をとろうと夢見たことはありませんでした。ですから、メダルの展示を見た子どもたちには、本当に好きなことを追求してほしいと伝えたいです」とメッセージを送りました。
寳金清博総長は「数少ない公式レプリカを寄贈していただき、大変感謝しています。リスト先生の業績は、化学の面白さを伝えると同時に、社会に役に立つ研究内容です。展示を見た子どもたちが『こういう仕事をしたい』と思ってくれたらいいなと思います。また、北大にいる研究者にも見てもらい、次のノーベル賞候補としてモチベーションを上げてほしいです」と話しました。
北海道大学総合博物館には、2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章さん(北海道大学ユニバーシティプロフェッサー、名誉教授)の公式レプリカメダルが展示されており、今後、リストさんの公式レプリカも一緒に置かれる予定です。現在の展示スペースを改装するため、公開は半年から1年後の見込みです。
リストさんは2023年、環境に配慮した次世代有機触媒の共同研究プロジェクト「Listプラットフォーム」を本学ICReDDに設立しました。リストさんを中心に、計算化学や人工知能などの多分野の技術を融合し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や環境負荷に配慮した次世代有機触媒の開発を推進する研究プロジェクトで、そのシンポジウムも8月29日にICReDDで開催されました。
【広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香】