函館キャンパスに水産科学未来人材育成館が誕生。完成披露式典が行われました

<写真>建物前で行われたテープカットの様子。後方には屋外展示されているニタリクジラの骨格標本が見える(撮影:広報課 広報渉外担当 長尾 美歩)

函館キャンパスに完成した「水産科学未来人材育成館」は、博物館(Museum)と図書館(Library)に加え、先進的アーカイブ機能(Archive)を備えた新しい教育施設です。キャンパス内にこれまであった水産科学館と図書館を融合させたつくりになっています。2024年10月1日のオープンに先立ち、9月29日に完成披露式典が行われ、本学関係者と招待者およそ80名が列席しました。

挨拶する寳金総長(写真:社会共創部広報課 長尾美歩)挨拶する寳金総長(撮影:長尾 美歩)

式典では、はじめに寳金清博 北海道大学総長が挨拶しました。関係者への謝意を述べた後、この施設が3つの機能「博物館(Museum)、図書館(Library)先進的アーカイブ機能(Archive)」を持つと紹介し、「これらに加え、地域とコネクトする機能が充分に備わっている」とアピールしました。

続いて、来賓の征矢野清 長崎大学海洋未来イノベーション機構長から挨拶があり、「将来を担う人材の育成において重要な役割を持つ水産科学未来人材育成館の誕生は、喜ばしい」と、総合水産教育の場である同施設への期待を寄せました。その後、屋外へと場所を移してテープカットが行われ、都木靖彰 水産科学研究院長が挨拶。「集い、教育する場としてこの施設を大いに活用したい」と抱負を語りました。

続いて行われた内覧会では、3つのグループに分かれた参加者が館内を巡りました。

内覧会のグループは、水産科学院にちなんでキングサーモン班、コンブ班、チョウザメ班と名付けられた(撮影:長尾 美歩)内覧会のグループは、水産科学院にちなんでキングサーモン班、コンブ班、チョウザメ班と名付けられた(撮影:長尾 美歩)

水産科学人材未来育成館は3階建てになっています。1階は、学生や地域の方々が交流し、学び、そして情報発信を行うフロアです。式典会場にも使われたホールは、イベントを始め様々な用途で利用可能。「ウェットラボ」と呼ばれる実験室もあり、こちらは大きなガラス窓から室内をクリアに見ることができます。ラボには、ごく小さな対象物を扱うことができるX線透過装置や実験台が置かれていて、来館した人が、学生などが実験を行う様子を見ることができるといいます。

式典が行われたホールは3つのスペースに分けることができ、様々な用途で使用できる(撮影:長尾 美歩)式典が行われたホールは3つのスペースに分けることができ、様々な用途で使用できる(撮影:長尾 美歩)
函館キャンパスの研究・教育をリアルに見せるウェットラボ(撮影:長尾 美歩)函館キャンパスの研究・教育をリアルに見せるウェットラボ(撮影:長尾 美歩)

2階は図書館で、閲覧室と書庫があります。最大14万冊が収容可能で、閲覧室にはおよそ2万冊が並んでいます。書庫には集密書架が導入され、1つのフロアですべての機能を備えてるといい、使いやすい動線になっているのが特徴です。閲覧室にある学習スペースのいくつかは窓に面していて、晴れた日には函館山が見えるそうです。

図書館の閲覧室には、2万冊の蔵書と38席の学習スペースがある。南向きの窓で明るいつくり(撮影:長谷川 亜裕美)図書館の閲覧室には、2万冊の蔵書と38席の学習スペースがある。南向きの窓で明るいつくり(撮影:長谷川 亜裕美)
手動式の集密書架が導入された書庫。窓側は学習スペースで、窓の外には桜の木が並ぶ(撮影:長尾 美歩)手動式の集密書架が導入された書庫。窓側は学習スペースで、窓の外には桜の木が並ぶ(撮影:長尾 美歩)

3階は、博物館機能を持つ水産科学館です。このフロアの最大の特徴は、収蔵室が見学可能なこと。通常、博物館において収蔵室は非公開とされますが、水産科学未来人材育成館では「収蔵展示」の形をとり、開かれたスペースにしました。収蔵室には、明治期につくられた和船模型や漁具資料、そして札幌農学校水産学科時代からの資料類が収蔵されています。

見学できる収蔵室(撮影:長谷川 亜裕美)見学できる収蔵室(撮影:長谷川 亜裕美)
船の模型に見入る参加者たち(撮影:長尾 美歩)船の模型に見入る参加者たち(撮影:長尾 美歩)

3階博物館スペース(展示室・収蔵室)は現在、展示物の設置が進められていて、2025年4月の公開を目指しています。

来年春の公開に向け準備が進められる展示室(撮影:長尾 美歩)来年春の公開に向け準備が進められる展示室(撮影:長尾 美歩)

この建物を訪れて一番に目を引くのは、入口横の屋外スペースに展示されているニタリクジラの実物全身骨格標本です。全長15mあるこの標本はもともとキャンパス内の旧水産科学館内に展示されていましたが、水産科学未来人材育成館へ移設するあたり、屋外に設置することになりました。

ニタリクジラの骨格標本が来館者をお出迎え(撮影:長尾 美歩)ニタリクジラの骨格標本が来館者をお出迎え(撮影:長尾 美歩)

設置を手掛けた北海道大学総合博物館 水産科学館助教の田城 文人さんによると、屋外に展示するにあたり、設置場所の工夫に加え、骨格そのものにも外の環境に耐えうる対策を施したそうです。「そのまま屋外に置くと風化してしまい、おそらく数年も持ちません。そこで、アクリル樹脂で骨を保護・強化しました。すべての骨を洗うのに1ヶ月、樹脂で保護するのに2ヶ月ほどかかりました。しっかり保護できるよう最初に骨の内部に樹脂を染み込ませ、それから表面をコーティングするという二段階の作業を施しました。」

この作業には、学生たちも参加したといいます。「予算の事情から外注が難しく、自分たちで行うという選択をしましたが、大きなメリットもありました。この先、維持管理を行う上で、今回の知識と経験を持った人材が学内いることで自分たちである程度のメンテナンスができるという点です。設置にかかわる作業もキャンパス近郊の職人らと一緒に行ったので、気になることが出てきた場合には現場ですぐに相談することもできます。大学博物館は、将来博物館で働く人材を育てるところでもあります。そういった点でも、今回、学生がこうした作業を経験したことは意義があったと思います。」

ニタリクジラの骨格標本展示を手掛けた、北海道大学総合博物館水産科学館助教の田城 文人さん。ニタリクジラの骨格標本展示を手掛けた、北海道大学総合博物館水産科学館助教の田城 文人さん(撮影:長尾 美歩)

式典終了後、水産科学研究院長の都木さんは、「好天に恵まれ、無事式典を終えることができました。ささやかながら準備した記念品にも『いいね』の声を頂き、ほっとしています。」と笑顔を見せ、これからの水産科学未来人材育成館について次のように話しました。「北大の関係者以外にもたくさんの方々に利用していただき、『新しいヒトと出会い、新しいモノが生まれる場』になってほしいです。特に、函館に住む学生をはじめとする若者の活動の場になると嬉しいです。」

水産科学研究院長の都木靖彰さん(撮影:長尾 美歩)
水産科学研究院長の都木靖彰さん(撮影:長尾 美歩)

新しい教育・交流の場としてスタートした水産科学未来人材育成館。函館キャンパスを中心に、水産学を囲んだ交流の輪がますます広がっていくことが期待されます。

【文:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美】