10年に渡る大型研究プロジェクト, WPI-ICReDDの幕開け前夜

本学が今年10月に採択された, 文部科学省国際研究拠点形成促進事業費補助金「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」。事業期間は 10 年で,毎年約7億円の補助金が交付されます。拠点名は「化学反応創成研究拠点」, 通称"ICReDD(アイクレッド)"。先日, ICReDD始動にあたり異分野融合の第一歩として, 11名の主任研究者(Principal Investigator, 以下PI)が自身の研究について発表し, 意見交換をしました。本ミーティングは学内関係者にも公開し, 若手研究者や学生など約120名が参加しました。

今回参加した拠点メンバー 今回参加した拠点メンバー

拠点長の前田理教授は, 「生命を含むすべてのものは, 化学反応によってつくられています。歴史を辿ってみても, 鉄の精製や, ハーバーボッシュ法など, 化学反応は世界を一変させてきました。ICReDDを通して, 化学反応により, 医薬, 食料, 環境, 材料などに関して貢献していくのが私たちの夢です。しかし, それほど大きな力を持っている化学反応ですが, それは試行錯誤の末(もしくは偶然)に発見されるものであり, 発見までに膨大な時間が掛かります。私たちは, その化学反応のつくり方を一変していきたい。計算科学を使って未知の化学反応を予測し, そこから実験により実現可能な化学反応を発見していくというストラテジーを構築していきたいのです」と話しました。

拠点長の前田教授 拠点長の前田教授

副拠点長である伊藤肇教授は, まずWPI事業について改めて説明しました。高いレベルの研究者を中核とした世界トップレベルの研究拠点の形成を目指すこの事業では, 「世界最高レベルの研究水準」,「融合領域の創出」,「国際的な研究環境の実現」,「研究組織の改革」の 4 つの自主的な取り組みが求められています。「ICReDDの最終目標は, 計算科学・情報科学・実験科学という3つの研究分野の融合です。目標達成のために, まずは2分野交流から始めていきましょう」と伊藤教授。当事業へのICReDDの意気込みを語りました。

副拠点長の伊藤教授 副拠点長の伊藤教授

今回のミーティングを通して, 事業の重要性や本学がすべきことについて再確認し, PI同士が一丸となって目標達成に向かえるよう, 互いの研究内容を理解し合うことができたのではないでしょうか。第1回ICReDD国際シンポジウムは, 来年の3月頃を予定しています。

参加者全員で 参加者全員で

第1回ICReDDミーティング(学内関係者限定)
日時:12月4日(火)10:00~17:45
会場:医学部 フラテホール

プログラム:
1.趣旨説明
 拠点長 前田理(理学研究院 教授) / 副拠点長 伊藤肇(工学研究院 教授)

2.各分野のPIより自身の研究概要発表

<計算科学>
「化学反応ルートマップの構築, 解析, および利用」
 拠点長 前田理(理学研究院 教授)
「第一原理反応ダイナミクスと触媒・光反応における実験との協働」
 武次徹也(理学研究院 教授)

<情報科学>
「化学反応インフォマティクスと機械学習」
 瀧川一学(情報科学研究科 准教授)
「実世界非構造データからの超高速データマイニング」
 有村博紀(情報科学研究科 教授)
「化学反応ネットワークの経路探索, ダイナミクスおよび分子データ科学へ」
 小松崎民樹(電子科学研究所 教授)

<実験科学>
「新しい反応と新しい材料の開発:計算科学と情報科学と実験科学のインタープレイを目指して」
 副拠点長 伊藤肇(工学研究院 教授)
「ひも状分子で切り拓く化学反応」
 猪熊泰英(工学研究院 准教授)
「不斉合成触媒の開発と理論計算の課題」
 澤村正也(理学研究院 教授)
「理論計算を基盤とした強発光分子材料の開発」
 長谷川靖哉(工学研究院 教授)
「機能性ゲル創製における化学反応の課題と理論計算への期待」
 龔剣萍(先端生命科学研究院 教授)
「ICReDDにおけるサイエンス・インフォマティクスと医学・医療の接点」
 田中伸哉(医学研究院 教授)

3.総括
 拠点長 前田理(理学研究院 教授)

(総務企画部広報課 研究広報担当 菊池優)