総合博物館 小林快次 教授が協力する「恐竜博2019」がまもなくスタート

 いよいよ「恐竜博2019」が、7月13日(土)から国立科学博物館(東京上野)で開催されます。注目は、本学 総合博物館の小林快次(こばやし よしつぐ) 教授が中心となって発掘調査した「むかわ竜」と「デイノケイルス」です。

「恐竜博2019」監修の国立科学博物館 真鍋真センター長と北海道大学総合博物館 小林快次 教授 「恐竜博2019」監修の国立科学博物館 真鍋真センター長と
北海道大学総合博物館 小林快次 教授

「むかわ竜」東京初上陸

 北海道むかわ町穂別で発見されたむかわ竜は、骨の8割以上が見つかった日本の古生物学史上最も完全な恐竜化石です。これまでの研究で鳥盤目ハドロサウルス科ハドロサウルス亜科エドモントサウルス類の新種である可能性が高まってきました(https://www.hokudai.ac.jp/news/2019/07/post-550.html)。ハドロサウルスの仲間は白亜紀後期の北半球全域に生息しており、その進化を探る上で極めて貴重な資料です。
 恐竜博2019では全身実物化石と、それらの化石をもとにつくられた全長8.2メートル、高さ3.6メートルの復元骨格模型の両方が展示されます。むかわ町以外では初公開となります。

小林快次教授とむかわ竜の全身復元骨格模型 小林快次教授とむかわ竜の全身復元骨格模型

むかわ竜の実物標本、写真は平成31年3月プレスリリースより むかわ竜の実物標本、写真は平成31年3月プレスリリースより

謎の恐竜デイノケイルスの全貌を世界初公開

 1965年、モンゴル・ゴビ砂漠で2.4 mもの巨大な腕の化石が発見されました。1970 年に「恐ろしい手」を意味するデイノケイルスと名付けられましたが、その後、他の骨が発見されず、50年近く謎の恐竜といわれてきました。

デイノケイルス 前あし(展示は複製) © Institute of Paleontology and Geology of Mongolian Academy of Sciences デイノケイルス 前あし(展示は複製)
© Institute of Paleontology and Geology of Mongolian Academy of Sciences

しかし、小林教授らの国際チームは、2006~2010年に2体のデイノケイルスの化石を発掘し、盗掘されていた頭骨などと合わせて、その全体像を明らかにしました(https://www.hokudai.ac.jp/news/2019/07/post-550.html)。その姿は、様々な恐竜の特徴を合わせ持った不思議なものでした。竜脚類のように空洞・軽量化した骨、肉食恐竜のような爪のある手、草食恐竜のような足、前後に長い頭で歯が無く、背中にスピノサウルスのような帆があったのです。腹部からは胃石と魚の骨が見つかり、雑食性だったと考えられています。また、その後の研究結果から、獣脚類オルニトミモサウルス類であることもわかりました。この発見は、2014年に科学雑誌「ネイチャー」に掲載され、世界中の恐竜学者を驚かせました。
 恐竜博2019では、デイノケイルスの頭骨などの実物化石と全身復元骨格模型が世界で初公開されます。

全長12メートル、高さ4.5メートルのデイノケイルス全身復元骨格模型 全長12メートル、高さ4.5メートルのデイノケイルス全身復元骨格模型

全身復元骨格模型は北海道むかわ町で製作

 恐竜博2019で展示されるむかわ竜とデイノケイルスの全身復元骨格模型を製作したのは、群馬県に本社を置くゴビサポートジャパンです。2017年からむかわ町穂別にも工場を構え、町民6人を雇用して骨格模型を作製してきました。
 むかわ竜の製作は研究、論文執筆と同時進行で行われたとのこと。200以上ある全ての骨を型取りし、小林教授の監修のもと、部位が特定された骨だけで研究結果に忠実に組み上げたそうです。代表の高橋功(たかはし いさお)さんは小林教授の監修のもと、出来るだけ多くの骨を使いたいという気持ちを押さえ、どこにどうつながるか判明した骨だけで研究結果に忠実に製作したそうです。
 「小林教授と議論しながら、作業を進めました。さまざまな制約のなか、植物食恐竜を迫力ある立ち姿にすることに苦労しましたが、重心を前にもってくることで今にも歩き出しそうな形にすることができました」と語りました。

実物化石で型をとり樹脂で製作した「むかわ竜」のレプリカとゴビサポートジャパン代表 高橋功さん 実物化石で型をとり樹脂で製作した「むかわ竜」のレプリカと
ゴビサポートジャパン代表 高橋功さん

小林教授も「鼻、腰、尾の一部以外はすべて化石をもとに製作することが出来ました。実際に組み立ててみることで、いままで論文を書く際には見過ごしてきたような新たな発見も沢山あり、より正確な情報で論文を書くことが出来ました。」と、骨格模型の製作が研究につながったといいます。

監修の国立科学博物館 真鍋センター長よりメッセージ

 恐竜博の監修をつとめる国立科学博物館の真鍋 真(まなべ まこと)センター長(標本資料センター、コレクションディレクター)にお話しを伺いました。

真鍋真センター長と恐竜博2019で展示されるモササウルスの全身復元骨格模型 真鍋真センター長と恐竜博2019で展示されるモササウルスの全身復元骨格模型

 「2019年は世界の恐竜観を大きく変えたデイノニクスの命名から50年の節目です。この発見により世界の恐竜観が大きく変わり、恐竜の一部が鳥に進化したと考えられるようになりました。この50年、めざましい発展をとげた恐竜学について、数々の標本とともに皆さんと振り返りたいと思っています。
 また、開催にあたり小林先生には、大変重要な役割を担っていただきました。メイン展示の『むかわ竜』と『デイノケイルス』には、発掘、研究と標本製作に小林先生が中心となって携わっています。小林先生とは、彼が高校生の時から発掘等でご一緒していますが、幼い頃からの情熱を失わず、世界各地で化石を発掘する恐竜学者のお手本のような存在です。
 むかわ竜は、むかわ町以外ではじめてご紹介することになります。ぜひ北大や北海道の皆さんも、『恐竜博2019』を応援してください」

 最後に恐竜学者を目指す子どもたちにメッセージをいただきました。 「講演会などで子どもたちから『夢を叶えて恐竜学者になったとき、まだ研究することは残っていますか?』と質問されることがあります。私は『まだまだたくさんあるので、安心して恐竜学者への道に挑戦してください』と答えています。私たち人類が恐竜について知っていることは、氷山の一角にすぎません。また、技術の進歩・普及によって、昔は考えられなかったようなことが分かるようになり、新しい発見につながっています。これからますます発展する分野であることは間違いありません」

ぜひ恐竜博2019を入口に本学の研究成果にふれてみてください。

恐竜博2019

■特別展『恐竜博2019』 The Dinosaur Expo 2019
会期:2019年7月13日(土)~10月14日(月・祝) 88 日間
会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
公式サイト:https://dino2019.jp/

【講演会】
 「最新恐竜研究in2019」
 小林快次 北海道大学総合博物館 教授(学術協力)

 8月3日(土)14:00~15:30(13:30開場)
 https://que.digital.asahi.com/question/10002530

 8月7日(水)13:00~14:30(12:30開場)
 https://que.digital.asahi.com/question/10002531

【関連番組情報】
 https://dino2019.jp/event.html

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(文:総務企画部広報課 学術国際広報担当 川本 真奈美
写真:同担当 菊池 優)