世界初!カムイサウルス完全復元骨格が北海道に出現!

総合博物館 教授 小林快次

<写真>全身骨格の復元プロジェクトを率いた北海道大学総合博物館教授の小林快次さん。カムイサウルスの全身骨格展示の前で(撮影:広報課 広報渉外担当 長尾 美歩)

むかわ町穂別で発掘され、2019年に新種と認定された「カムイサウルス・ジャポニクス」(全長8メートル)の完全版の全身骨格の展示が、NHK札幌放送局1階ホールで始まりました。骨格の復元は、北海道大学とNHK札幌放送局が結んだ包括連携協定の一環として制作されました。2025年3月21日には、展示会の開会式と「カムイサウルス春休み特別展」の内覧会が行われ、復元プロジェクトに携わった北海道大学総合博物館教授の小林快次さんらがあいさつしました。

テープカット前の集合写真(撮影:長尾 美歩)テープカット前の集合写真(撮影:長尾 美歩)

北海道大学総合博物館教授の小林快次さんは「カムイサウルスはティラノサウルスやトリケラトプスと同じ時代に、ここ北海道の地を歩いていた恐竜です。当時を想像をしてロマンや感動を味わいながら、全身骨格の大きさと迫力をぜひ多くの人に体感してほしいです。大規模な発掘作業開始から約12年が経ち、私もこうして本来の姿に立ち会うことができて、感無量です」と話しました。

「完全版」のカムイサウルス全身骨格(撮影:長尾 美歩)「完全版」のカムイサウルス全身骨格(撮影:長尾 美歩)

カムイサウルスはこれまで、全身の約7割の骨が見つかっており、復元骨格の模型はむかわ町や東京・国立科学博物館で展示されたことはありましたが、欠損部分の復元は未完成でした。小林さんの研究チームはこのたび、カムイサウルスに近い種類の恐竜の化石のデータを参考にしながら、コンピュータ上で位置関係を詳細に確認し、3Dプリンターで再現して約3割の欠損部分を正確に復元することに成功しました。

特別展では、全身骨格がコンピュータ上で再現される過程が放映されている(撮影:長尾 美歩)特別展では、全身骨格がコンピュータ上で再現される過程が放映されている(撮影:長尾 美歩)

復元が特に難しかったのは、カムイサウルスの特徴のひとつである頭蓋骨のとさかのような部分で、北米から発掘されたブラキロフォサウルスを参考にしてきれいに付け直されました。小林さんは「とさかは過去の骨格の造形より薄くなり、精悍な顔つきになったので、前にカムイサウルスの復元骨格を見たことがある人もきっと違う印象を受けると思います」と話していました。

小林さんが発掘作業に必ず持っていく「七つ道具」の展示(撮影:広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美)小林さんが発掘作業に必ず持っていく「七つ道具」の展示(撮影:広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美)

カムイサウルスは2003年、むかわ町の川沿いで、地元の化石愛好家によってしっぽの骨が発見され、2013、2014年に小林さんの研究チームが本格的に発掘調査を実施しました。背骨にある胴部分の骨が前に傾いているという珍しい特徴などから、2019年に新種と認定されました。前足は華奢で、後ろ足で二足歩行をする植物食の恐竜と考えられており、体重は約4~5トンと推定されています。すねの骨を薄く切った断面に見られる年輪のような「成長停止線」を調べた結果、11~13歳の大人だということもわかっています。

内覧会で挨拶する北海道大学の行松泰弘理事(撮影:長谷川 亜裕美)内覧会で挨拶する北海道大学の行松泰弘理事(撮影:長谷川 亜裕美)
古生物の化石や標本の展示(撮影:長谷川 亜裕美)古生物の化石や標本の展示(撮影:長谷川 亜裕美)

展示会場にはこのほか、同時代に生きていた古生物の化石や標本も展示され、カムイサウルスの秘密に迫る「カムイサウルス春休み特別展」が4月6日まで同会場で開催中です(入場無料)。内覧会に出席した北海道大学の行松泰弘理事は、「特別展では実際に触れられる標本や、迫力ある映像など、親子で楽しめるコンテンツがたくさんあるので、この機会に恐竜の世界を身近に感じてほしいと思っています」と話しました。

ぜひ春休み中のお子さんといっしょに、カムイサウルスの迫力を体感してください!

カムイサウルスの着ぐるみを着たどーもくん(左)と小林さん(撮影:長尾 美歩)カムイサウルスの着ぐるみを着たどーもくん(左)と小林さん(撮影:長尾 美歩)

なお、完全版カムイサウルスの全身骨格は2026年3月まで1年間、NHK札幌放送局で展示されており、同年4月以降は北海道大学総合博物館で展示予定です。

【文:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香】