ノーベル化学賞受賞のベンジャミン・リスト特任教授が来学。ユニバーシティプロフェッサーの称号を授与

化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)主任研究者(PI)・特任教授 ベンジャミン・リスト

2021年にノーベル化学賞を受賞した化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD、以下ICReDD)主任研究者(PI)・特任教授のベンジャミン・リストさん(マックス・プランク石炭研究所長)が、9月20日(火)、受賞以来はじめて来学しました。翌21日(水)には、「ノーベル化学賞受賞をお祝いする会」が開催され、本学がリストさんにユニバーシティプロフェッサーの称号を授与。また22日(木)には、学生向け特別講演会「ノーベル化学賞を受賞して~次世代を担う人々へのメッセージ~」が開催されました。

ユニバーシティプロフェッサーの称号を授与

北海道大学は、9月21日(水)にベンジャミン・リストさんの「ノーベル化学賞受賞をお祝いする会」を開催し、ユニバーシティプロフェッサーの称号を授与しました。

「ノーベル化学賞受賞をお祝いする会」で講演するベンジャミン・リスト特任教授 (撮影:創成研究機構 菊池優) 「ノーベル化学賞受賞をお祝いする会」で講演するベンジャミン・リスト特任教授(撮影:創成研究機構 菊池優)

リストさんは、2018年よりICReDDの主任研究者、2020年からは特任教授を務めています。「不斉有機触媒の開発」の功績で、デイビッド・マクミラン博士(米プリンストン大学)と共に2021年ノーベル化学賞を受賞しました。ユニバーシティプロフェッサーの称号は、世界的に極めて顕著な教育研究業績を挙げた研究者のうち、長期にわたり本学の教育研究の進展に寄与すると認められた者に総長が与えるもので、2010年ノーベル化学賞受賞の鈴木章さん(北海道大学名誉教授/特別招聘教授、2015年に授与)、喜田宏さん(人獣共通感染症国際共同研究所 統括 特別招聘教授、2016年に授与)に続く三人目。リスト博士はドイツのマックス・プランク石炭研究所を拠点としており、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、受賞以来はじめての来学となりました。

寳金清博北海道大学総長よりユニバーシティプロフェッサーの称号を授与されるベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 学術国際広報担当 長尾美歩) 寳金清博北海道大学総長よりユニバーシティプロフェッサーの称号を授与されるベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 学術国際広報担当 長尾美歩)

授賞式では、寳金清博北海道大学総長、クレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日ドイツ連邦共和国特命全権大使、鈴木直道北海道知事が挨拶し、リスト博士のノーベル賞受賞を祝うとともに、同博士やドイツ科学界との連携強化の思いを語りました。

祝辞を述べるクレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日ドイツ連邦共和国特命全権大使(撮影:寺島博美(コトハ写)) 祝辞を述べるクレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日ドイツ連邦共和国特命全権大使(撮影:寺島博美(コトハ写))
ビデオメッセージで祝辞を述べる鈴木直道北海道知事(撮影:寺島博美(コトハ写)) ビデオメッセージで祝辞を述べる鈴木直道北海道知事(撮影:寺島博美(コトハ写))

続いて、リストさんが記念講演を行い、様々な化学反応の鍵を握る触媒研究の魅力や、ノーベル賞受賞の対象となった不斉有機触媒を発見した経緯を紹介しました。また、究極の研究目標として、二酸化炭素を炭素と酸素に分解する人工光合成の開発を挙げました。

次世代を担う人々へのメッセージ

翌22日には、ICReDDが主催する学生向け特別講演会「次世代を担う人々へのメッセージ」が開催され、リストさんが本学の学生たちに自らの情熱に従うことの大切さを伝えました。「結果ばかりを追い求めてはいけません。本当に好きなことをしていれば結果が出なくても幸せですが、嫌いなことをしていて結果も出なければ幸せではないですよね」と話します。リスト氏は自由な環境で育ち、子供の頃から自宅の地下に実験室をつくって大好きな化学実験に勤しんだといいます。その後、化学反応を促進する「触媒」に魅せられ、やがて生体内の触媒である酵素の構造を見てノーベル賞につながるアイディアを得ました。「(固定観念に捕われず)あらゆる可能性にオープンであることが大事です」と話します。

講演するベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 広報・渉外担当 齋藤麻衣) 講演するベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 広報・渉外担当 齋藤麻衣)
学生からの質問に答えるベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 学術国際広報担当 川本真奈美) 学生からの質問に答えるベンジャミン・リスト特任教授(撮影:広報課 学術国際広報担当 川本真奈美)
司会のICReDDコリン・ステッカー特任助教。質疑応答や、講演会後の記者会見では通訳も務めた(撮影:広報課 広報・渉外担当 齋藤麻衣) 司会のICReDDコリン・ステッカー特任助教。質疑応答や、講演会後の記者会見では通訳も務めた(撮影:広報課 広報・渉外担当 齋藤麻衣)

続く記者会見では、ノーベル賞を受賞した感想を改めて聞かれ、「科学者にとってこれ以上の賞はなく、心より光栄に思います。ですが、無数の研究者の優れた発見、先人たちの積み重ねの結果であり、私一人の受賞ではありません」と話しました。今後の研究については、「自分の好きな基礎研究をしながら社会の課題解決にも貢献できたら最高です。二酸化炭素を回収する化学反応の開発など、特に地球温暖化への対策に化学を通じて少しでも貢献できたら嬉しいです」と語りました。

国際連携機構/広報・社会連携室 南波直樹

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Dr. Benjamin List bestowed the special title "Hokkaido University Professor"