【動画公開】AIを活用し、安全な除雪作業を目指す

工学研究院 准教授 江丸貴紀

<写真>除雪機用人検出システムの実証実験を終えた工学研究院 江丸貴紀准教授(左端)と研究室の学生たち

北海道のような積雪地域では、冬季の除雪は必要不可欠ですが、作業員の人手不足、高齢化が進むなか、作業上の安全性も課題となっています。そこで、工学研究院 准教授の江丸貴紀さんは、安全性を高めるために様々な装置を開発しています。

2023年2月4日、札幌キャンパス内で行われた除雪機用人検出システムの実証実験

精密計測学・ロボティクス研究室では、ロボット技術、情報技術、AI(人工知能)をベースに、除雪作業の安全性向上や農作業の自動化など、社会的課題の解決に向けた研究をしています。

一般的に除雪機による除雪作業は、照明の少ない夜間に行われます。現在は、安全上、運転手の他に、少なくとも1人が除雪機の前を歩いて誘導する必要があります。江丸さんは、「札幌市の場合、一般道路の除雪は午後10時頃から午前4、5時まで行われます。1台の除雪機に対して1人の誘導員が歩く距離は1日10 kmにおよぶこともあります。ホワイトアウトのような悪天候の時は、ドライバーの視界が狭くなり、危険な労働環境が課題となっています。そのため、除雪作業の安全性を向上させることを目標に研究開発を進めています」と、語ります。

関連する研究テーマのひとつが、株式会社NICHIJOとの共同で実施している歩道除雪機用のリアルタイム人検出システムの開発です。このシステムの特長は、天候に左右されない精度の高さにあります。2月4日、北海道大学札幌キャンパス内で実証実験を行い、現場でリアルタイムにセンサーの性能を確認しました。

実証実験の様子実証実験の様子
ノートパソコンの画面に映し出された、LiDAR-サーモカメラ投影の様子。LiDARによる除雪機周辺の3Dマップ(左)とセンサーの人体検知画面(右)。上の画面は除雪機の右側に設置したLiDAR-サーモカメラで、下の画面は反対側に設置したLiDAR-サーモカメラで撮影している。(提供:江丸准教授)ノートパソコンの画面に映し出された、LiDAR-サーモカメラ投影の様子。LiDARによる除雪機周辺の3Dマップ(左)とセンサーの人体検知画面(右)。上の画面は除雪機の右側に設置したLiDAR-サーモカメラで、下の画面は反対側に設置したLiDAR-サーモカメラで撮影している。(提供:江丸准教授)

除雪機の上に設置された2組のLiDAR、RGBカメラ、サーモカメラを組み合わせ、人の検知だけでなく、除雪機との距離を計算するアラートシステムを構築しました。このアラートは、20m以内に人が近づくと、オペレーターに通知を送ります。10m以内に人が近づくと "DANGER "アラートが表示されます。

また、このシステムは自分の居場所を把握する必要があります。そのため、除雪機の上にはGPSのアンテナも設置しています。しかし、スマートフォンに搭載されているような一般的なGPSは、メートルレベルの精度しかありません。この除雪機では、GPSに加え、RTK(リアルタイムキネマティック)を採用し、センチメートル単位での自己位置推定能力を向上させています。

「目標としては、3年後を目途に社会実装したいと考えています。このようなシステムが歩道除雪機だけではなく、より大型の除雪機や他の作業機械にも手頃なコストで設置できるようになると期待しています」と、江丸さんは話します。

3年後を目途に社会実装したいと話す工学研究院 江丸貴紀 准教授3年後を目途に社会実装したいと話す工学研究院 江丸貴紀 准教授

さらに江丸さんの研究グループでは、将来的に自動運転除雪機の走行にもつなげたいと考えています。他の関連プロジェクトでは、経済産業省の支援を受けて、自動運転車の開発も進めています。江丸さんは、「歩道除雪機の自動運転の実用化はかなりハードルが高いと思っています。まずは空港や港の中、駐車場のような限定された空間からはじめ、いつか実現できればと思います」と、今後の展望を語りました。

この記事の原文は英文です

【再編:創成研究機構/広報課 学術国際広報担当 川本 真奈美、写真:広報課 学術国際広報担当 長尾美歩、
動画制作:広報課 学術国際広報担当 Aprilia Agatha Gunawan 】