【北大道新アカデミー】2023年10月に6名の研究者が講義を実施

2023年10月に、今年度後期の北大道新アカデミーの第3〜5回の講義が行われました。同アカデミーは、学外の社会人を主な対象としたリカレント教育プログラムで、文系コースと理系コースに分かれ、それぞれ8回の講義で構成されています。

文系講座

文系コースは、法学研究科附属高等法政教育研究センターが担当します。総合テーマは「法のコンパス:グローバル社会の新秩序形成に向けて」です。ロシアのウクライナ侵攻や、気候変動など、日々刻々とグローバルに展開する国際社会の問題をより深く理解するための視座を提供します。

第3回「国際法とは何か」 法学研究科 教授 児矢野マリ

後期の文系コース第3回は、国際法を専門に研究する児矢野さんが務めました。講義では、国際法と国内法の異なる点や、国連憲章の概要、個々の条約などについて、ニュースに上る話題を国際法の観点から切り取り、わかりやすく紐ときました。特に「国際海洋法」の事例を用いての条約の話題や、歴史的な経緯に基づき作られた慣習国際法の話しなど、受講生の関心を惹く話題を散りばめながら、90分間の講義が行われました。 受講者からは「国際法についてよく知りませんでしたが、本日の講義を受け、身近なものとなり、今後、関心を持ち勉強していこうと思います」、「エネルギッシュでパワフルな講義に感謝します」など、児矢野さんの講義に魅了された感想が、多数寄せられました。

日時:2023年10月7日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:35名

第4回「グローバリゼーションとフランス社会」 法学研究科 教授 中村 督

後期の文系コース第4回目は、ヨーロッパ政治史を専門に研究する中村督さんが担当しました。この講義では、グローバリゼーションの進展とそれに伴うフランス社会の問題や変容に焦点を当て、歴史的背景を踏まえながら考察を行いました。フランスにおける抗議運動やデモの特徴、1960年代から1970年代の歴史から理解を深めました。「68年5月(五月革命)」の学生運動や労働運動とその後の影響を考察し、グローバリゼーションと個人の権利保護、共同体の関係についても解説しました。 受講者からは、「フランス社会のことが分かりました。特に5月革命の前と後の違いが分かりやすく説明されたので、フランスという国に対する認識が改まりました」、「フランスの社会状況からのグローバリゼーションというものが「68年5月」の例をもとにして、かなり分かりました」、「共同体について各国の様子がこれからどうなっていくのかを見ていく視座ができたと思います。とても面白かったです」といった多数の感想が寄せられました。

日時:2023年10月14日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:35名

第5回「グローバル化時代の社会民主主義」 法学研究科 准教授 前田亮介

後期の文系コース第5回目は、日本政治外交史を専門とする前田さんが、戦後北海道における日本社会党-民主党の歴史を紐解くお話をしました。横路節雄・孝弘親子を軸に、北海道ではなぜ社会民主主義政党が強かったのか、そして他の地域と異なる性格はなぜ形成されたのか、グローバル社会と北海道のローカル性をつなげるお話でした。受講者からは「北海道に住んでいながら、なかなか見えていなかった背景が分かり、もう少し知りたいと感じれた」、「道民としては大変身近なお話しでした」といった声が寄せられました。

日時:2023年10月21日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:35名

理系講座

理系コースは、獣医学研究院の研究者が講義を行います。総合テーマは「『動物のお医者さん』のその先へ」です。人を含む地球上の動物と生態系の健康を守る「One Health」について、最先端の研究を通じてわかりやすく紹介します。

第3回「ヒグマとはどんな動物か:正しく知ることからはじめよう」 獣医学研究院 准教授 下鶴倫人

後期理系コースの第3回目は、野生動物学が専門の下鶴さんが行いました。講義では、熊の1年間の生活を中心に、季節ごとに変化する食性と糞について画像とクイズを交えて解説しました。また、冬眠中の出産と受精卵の発育が止まる着床遅延について研究方法の紹介を交えながら解説しました。特に近年住宅街に出没するようになったヒグマとの付き合い方については、ヒグマの誘因物となる生ごみのもたらす問題点や啓発活動の話しがありました。 受講生からは「ヒグマの生態や人との関わりについて学ぶことができ、北海道に住む私たちと熊との共存について改めて考えるきっかけをいただきました。ありがとうございました」、「春から初夏にかけて熊にとって厳しい季節だということを知ることができ、非常に面白かったです」といった感想がありました。

日時:2023年10月7日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:64名

第4回「人と動物の比較腫瘍学:がんを比べてわかること」 獣医学研究院 講師 青島圭佑

後期の理系コース第4回目は、獣医病理学・比較腫瘍学を専門に研究する青島さんが担当しました。この講義では、人や犬,象やクジラなどさまざまな動物のがんに関わる共通点と相違点を学びました。また、具体的な研究例として、青島さんが北大公式第1号クラウドファンディングで研究費を募った「血管肉腫」について解説し、従来の方法から進化したシングルセル遺伝子発現解析を用いた研究経過についても説明がありました。今後、犬での研究成果が人や他の動物の治療法にも応用されることが期待されています。受講者からは、「人も動物もがんになることや人と犬には共通するがんが多くあることを知り、改めて人と動物の医学には境界線が無いことを学ぶことができ、大変勉強になりありがとうございました」、「がんのなりにくさの秘密を研究し、人の治療に役立てて欲しいです。血管肉腫の研究で、がん細胞がさらに解明されて欲しいです」といった多数の感想が寄せられました。

日時:2023年10月14日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:64名

第5回「動物園・水族館の役割と繁殖への獣医師の関わり」 獣医学研究院 准教授 栁川洋二郎

後期の理系コース第5回目は、繁殖学・野生動物学を専門に研究する栁川さんが担当しました。現在の動物園・水族館には生物保全の役割があり、「栁川さんは依頼があれば全国どこへでもすぐに駆けつけ、性別検査や不妊の原因を調べている」という具体的エピソードに受講者の皆さんも強く興味をもっている様子でした。最後には、単に動物を繁殖させればいいというわけではなく、その動物が生息している地域や、実際に生息している動物そのものに対しても意義がなければならない、とOne Healthの理念を語っていました。受講者からは、「いろいろな試行錯誤をされていて、その結果の繁殖なんだと思いました。動物園に行く気持ちが変りました」、「ゾウの繁殖のネガティブな面...考えたこともありませんでした。ミャンマーのこと、もっと勉強します」といった多数の感想が寄せられました。

日時:2023年10月21日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:64名

【文・写真:大学院教育推進機構リカレント教育推進部】

北大道新アカデミーとは

北大道新アカデミーは、地域の「知」のために、本学と北海道新聞社との包括連携協定に基づき、大学院教育推進機構リカレント教育推進部がコーディネーション行い、(株)道新文化センターと連携し実施する、学外の社会人を主な対象としたリカレント教育プログラムです。北海道大学 寳金清博総長および北海道新聞社 宮口宏夫社長からの、北大道新アカデミーに対するメッセージはこちらです。

北大道新アカデミー 2023年度 後期講座 理系・文系