北大の選りすぐりの研究を展示で紹介-総合博物館で「北大の探求心2024」第2期が開催中②

工学研究院 教授 村井祐一

<写真>工学研究院の船舶工学の展示を担当した村井 祐一 教授(撮影:社会共創部広報課 長尾 美歩)

北海道大学には12の学部と関連する大学院のほかにも、様々な教育研究組織があります。現在、北海道大学総合博物館では、夏季企画展「北大の探求心2024」が開催中で、その選りすぐりの研究成果を紹介しています。今回は第2期(9月29日(日)まで)の展示をご紹介いたします。

第2期の4つの展示のうちのひとつ、工学研究院の展示では、宇宙・航空・船舶工学を中心とした「『f3(エフキューブ) 工学』教育研究センター」の研究を紹介しています。同センターは、海洋、空、宇宙(Frontier)を舞台として、北海道の広大なフィールド(Field)を生かして、要素技術の開発にとどまらず実用化(Final product)までを行う教育研究組織です。

宇宙・航空・船舶工学の研究を紹介する工学研究院の展示コーナー(撮影:長尾 美歩) 宇宙・航空・船舶工学の研究を紹介する工学研究院の展示コーナー(撮影:長尾 美歩)

宇宙・航空・船舶のうち、船舶工学の展示を担当した工学研究院 教授 村井祐一さんにお話を伺いました。村井さんは、船の燃費を改善しCO2排出を削減するために、空気潤滑といって、船の表面をびっしりと細かい泡で覆うことで船の抵抗を減らす研究をしています。まずは泡の流体力学のメカニズムを解明し、そのメカニズムを設計と製造に生かして船に実装することを目指しています。

「私たちの研究室では、水中翼という翼を船の底に設置する独自の仕組みで泡を発生させています。この翼をつけると、船が前進すると勝手に空気が入っていくので、コンプレッサーやブロアといった機械を使わなくても泡を発生させることができ、余分な動力をかけなくて良いんです」と話します。「船の抵抗の削減は、自動車や飛行機に比べて、これまであまり注目されてきませんでした。理論的には空気潤滑によって、現在の90%くらいまで抵抗を減らせると考えています。いま実現出来ているのは、10%強くらい。伸びしろが多い分野なので、もっと色々な人と連携して実現していきたいと思っているところですね」と語ります。大型船にもなると非常に沢山のエネルギーを使うので、CO2削減の影響は大きいといいます。現在は国内外の研究機関等と連携して研究を進めているそうです。

展示を解説する工学研究院 村井 祐一 教授(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤 有香) 展示を解説する工学研究院 村井 祐一 教授(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤 有香)

本企画展の工学研究院のコーナーでは、こうした研究内容を解説する映像やパネルのほかに、水中翼による泡の発生を実験する装置を再現した水槽などが展示されています。また、船舶以外には小型人工衛星やロケットに関する展示物も見学できます。

水中翼を動かすと泡が発生する様子を見ることができる展示。上の層が空気、下の層が海を模している(撮影:長尾 美歩) 水中翼を動かすと泡が発生する様子を見ることができる展示。上の層が空気、下の層が海を模している(撮影:長尾 美歩)
実物大の水中翼(撮影:長尾 美歩) 実物大の水中翼(撮影:長尾 美歩)
人工衛星やロケットに関する展示(撮影:長尾 美歩)人工衛星やロケットに関する展示(撮影:長尾 美歩)

村井さんに見どころを伺ったところ、「日常的に見ている泡がどんなふうに社会に役立っているのかを、ぜひ見に来てください。新しい技術をゼロから生み出すところは、いちばん面白くて失敗が多い。けれども、いちど出来たら世界中の人が注目して活用してくれる。そこが面白いですね。皆さんにも工学部のものづくり、発明に関心を持っていただけたら嬉しいです」とメッセージをいただきました。

第2期の企画展ではこのほか、アイヌ・先住民研究センター、環境健康科学研究教育センター、地震火山研究観測センターの展示も行われています。この機会にぜひ、北大の最先端の教育・研究の成果にふれてみてください。

【文:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 川本真奈美】

■令和6年度夏季企画展「北大の探求心2024」

開催日時:
第2期:2024年8月20日(火)~9月29日(日) /アイヌ・先住民研究センター、環境健康科学研究教育センター、工学研究院、地震火山研究観測センター
会場:
北海道大学総合博物館1階 企画展示室
札幌市北区北10条西8丁目