【Academic Fantasista 2023】札幌北高校にて2名の研究者が出張講義を実施

「両刃の剣」放射線の身体への影響を考える 保健科学研究院 准教授 福永久典

放射線は目に見えない「両刃の剣」。主に放射線生物学を専門に活動している福永さんは、福島第一原子力発電所事故後に福島県の病院で医師として勤務していた時、放射線の健康に対する影響を心配する住民から「ここ(福島)に住んでも大丈夫でしょうか?」と問われたといいます。そして、その問いに対する答えを求めて、今も研究を続けていると話しました。講義では、放射線の有用性と危険性の両面を示し、常にリスクとベネフィットのバランスを考えながら扱う必要があると説明。健康への影響について考える際には、放射線量の観点から見ると同時に、放射線への耐性に個人差があることも加味する必要があるだろうと説明しました。様々な答えがある世界の中で、周囲と議論を重ねながら、自分なりの答えを追究する大切さを生徒に伝えました。

生徒の質問に笑顔で答える福永准教授 生徒の質問に笑顔で答える福永准教授

生徒からは「放射線には様々なメリット、デメリットがあると知り、その活用方法についての研究に興味が湧いた」「実際に福島で勤務した医師の話を聞き、放射線について考える貴重な経験になった」「体への影響など、放射線については良いイメージがなかったが、今回の講義で印象が変わった」などの声が聞かれ、研究分野への関心を強く持った様子でした。

福永先生の講義の様子

日時:2023年11月29日(水)15:50-17:20
会場:北海道札幌北高等学校
参加生徒:2年生 約25名

「ナノテクノロジーが拓く新しい電池」理学研究院 准教授 小林 弘明

私たちの生活に欠かせないリチウムイオン電池。理学研究院の小林さんは、その開発の歴史やエネルギーを取り出す仕組みについて解説しました。そのうえで、より安全で高性能な電池が求められていると話し、次世代電池の開発について、自身が取り組んでいる研究を紹介。リチウムに代わる元素を用いるにあたり、解決しなければならない課題へのさまざまなアプローチを説明しました。小林さんは、新しい電池を作るには新しい材料を作り出す必要があり、さらに、その作り方も開発しなければならないと話し、そのためには中学高校からの知識の積み重ねが重要であること、また、夢を大きく持つことが大切だと生徒たちに伝えました。

リチウム電池の開発について解説する小林准教授" リチウム電池の開発について解説する小林准教授

生徒からは「コスト面や安全性、軽量化など、化学の分野だけにとどまらないない化学研究に新鮮さを感じた」「普段触れない分野だったからこそ、新しい世界が見えて楽しかった」など、研究の可能性や楽しさに興味を引かれた様子でした。

小林先生の講義の様子

日時:2023年12月18日(月)15:50-17:20
会場:北海道札幌北高等学校
参加生徒:1-2年生 約10名

(広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門)

アカデミックファンタジスタとは?

北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度は北海道の高校等を対象に31名の教員が講義を実施しています。2023年度の参加教員はこちら

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