【Academic Fantasista 2023】旭川東高校で3名の研究者が出張講義を実施

12月8日(金)旭川東高校にて、3名の研究者が講義を行いました。

「非対称な世界、非対称な物質」理学研究院 教授 吉田紘行

私たちの身のまわりには、磁石や超伝導体など、物質の中の電子状態が方向性を持つ(非対称になる)と機能性が現れるものがあります。吉田さんは、こうした物質の対称・非対称が生み出す現象について、自作のピタゴラ装置の映像等を交えて紹介しました。周期表から元素を選び出し、化学的な手法で新しい物質の合成を行っている吉田さん。講義の後半では、より高い温度で超伝導体になる物質の発見を目指す自身の研究内容について解説しました。受講した生徒達からは、「時代の変化による技術の進歩は予想できないものだという大きなことを学んだ」、「高温超伝導体のポイントが銅酸化物で構成されるフラットな面であることがわかった。かなりの収穫だった」などの声が寄せられ、超伝導などの物理現象に対する理解を深め、ますます興味を持ったことが伺えました。

物質の非対称性について解説する吉田教授 物質の非対称性について解説する吉田教授

「漸化式を使って様々な現象を数式にしてみよう」電子科学研究所 教授 長山雅晴

自然現象や生命現象など、理解したいことを数式で表現する「数理モデリング」の研究をしている長山さん。これまでに様々な研究分野の研究者と協力して、人の体内の血糖値を予測して病気を未然に防ぐための数理モデルへの挑戦など、数学が社会のさまざまな課題解決の手段として使われていることを紹介しました。高校で習う漸化式を使った数理モデリングの例として、ろうそくの炎の振動やメトロノームの共振を挙げ、計算結果が実際の現象と合うことを示しました。また、漸化式を使えば感染症の流行を予測することもできるといい、世の中に役立つ数学の魅力について語りました。講義を受けた生徒からは、「何百文字にもなるような漸化式が、シミュレーションで現象を説明できることを知り面白かった」、「モデルを作って数式を立て、それを修正することを繰り返して問題解決に繋げる。一発では問題は解決しない、モデルの作り方が重要だということが印象に残った」など、数学の面白さを体感する講義となった様子でした。

生徒たちへ数理モデルについて解説する長山教授 生徒たちへ数理モデルについて解説する長山教授

「環境と子どもの精神神経発達との関連:北海道スタディの知見から」環境健康科学研究教育センター 特任講師 山﨑 圭子

生理心理学を専門とする山﨑さんは、「北海道スタディ」を通して見られた、農薬やダイオキシンと子どもの発達との関連について説明しました。「北海道スタディ」とは、胎児期から出生後に至るまでの様々な環境と子どもの健康の関係性を明らかにする研究です。この研究結果について、山﨑さんは実際に得られた数値などを見せながら、胎児期に母親の血中に含まれる化学物質の濃度と思春期以降の注意機能との間に関連がある可能性が示されたことを解説しました。講義を受けた生徒からは「科学的な面から客観的に子どもの発達についての研究があると知り、心理的な部分以外からも研究する大切さを感じた」、「結論を出すまで10年、20年かかる研究をしていることに驚いた。研究成果を積み重ね考察をするということが、すごく面白いと感じた」など、大学での研究や手法にも興味を持った様子でした。

北海道スタディについて解説する山﨑特任講師 北海道スタディについて解説する山﨑特任講師

日時:2023年12月8日(金)14:00―16:00

会場:北海道旭川東高等学校

参加生徒:1-3年生 約90名

(広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門)

アカデミックファンタジスタとは?

北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度は北海道の高校等を対象に31名の教員が講義を実施しています。2023年度の参加教員はこちら

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