「北大マルシェアワード2025」が開催 ~マルシェから生まれる生産者と消費者の協働の輪

(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美)

2025年10月25日(土)と26日(日)、札幌キャンパス農学部棟で「北大マルシェアワード2025」が開催されました。農学部棟前のマルシェには、収穫シーズンを迎えた農産物などが並び、出店した生産者と学生が来場者と笑顔で交流し、賑やかな会話が飛び交いました。

「北大マルシェアワード」は、地域の温もりあふれるマーケットと学術フォーラムの二本立てで構成されています。2日間行われたマルシェに加え、25日(土)には北大マルシェアワードの最終審査が開催され、持続可能な農業を実践する生産者などが表彰されました。

農学部大講堂で行われた北大マルシェアワード最終審査農学部大講堂で行われた北大マルシェアワード最終審査

農学部棟前で行われたマルシェは、買い物客で賑わい、生産者と学生、来場者らが農産物などを囲んで言葉を交わす「生産者と消費者の交流の場」となりました。道内各地から集まった農産品や手作り菓子、ハーブや薬草を使った化粧品など、土地と人とのつながりや持続可能性のもとに生み出された商品が並び、訪れた人々は1つ1つのテントを回って生産者との会話や買い物を楽しみました。(今年の出店店舗と生産者のリストは、「北大マルシェアワード」のWebサイトでご覧になれます。)

1) ときいろファーム:自家製ベリージャムを販売(撮影:広報・コミュニケーション部門 子安奈都子)
<br>2)グラッドニー牧場:地元産の冷凍牛肉を販売
<br>3)種を育てる研究所:ハーブや薬草を使ったジン、ハーブティー、ハンドクリームを販売
<br>4)ザ・カントリーパントリー:イチゴの商品を販売
1)ときいろファーム:自家製ベリージャムを販売(撮影:広報・コミュニケーション部門 子安 奈都子)
2)グラッドニー牧場:地元産の冷凍牛肉を販売
3)種を育てる研究所:ハーブや薬草を使ったジン、ハーブティー、ハンドクリームを販売
4)ザ・カントリーパントリー:イチゴの商品を販売

一見、学祭のように見えるこのイベントは、食を生産し、販売し、消費する人々から直接学ぶ取り組みとして、大学院共通授業科目の一環で行われているものです。今年で16年目を迎え、イベントという枠組みを超えて生産者と消費者をつなぐ活動へと成長しています。

フランス視察から始まった「北大マルシェ」

第1回北大マルシェの運営に携ったという卒業生(左)は審査員として参加。恩師の小林准教授と第1回北大マルシェの運営に携ったという卒業生(左)は審査員として参加。恩師の小林准教授と

北大マルシェは2009年に始まりました。立ち上げたのは、農学研究院准教授の小林国之さんと三谷朋弘さんです。小林さんによると、きっかけは、18年前に三谷さんと行ったフランス視察だったそうです。地方の農家が都市の消費者に直接農産物を届ける「マルシェ」を目の当たりにし、生産者と買い物客の活気ある交流がとても印象的だったといいます。

帰国後、小林さんと三谷さんは、フランスで見たマルシェの雰囲気を北大で再現したいと考えました。人々が集い、語り合い、食について教室の外で学べる「マルシェ」の実現を目指し、「食の安全・安心基盤学」という大学院共通授業の通年科目を立ち上げました。授業では、農場訪問や生産者と消費者をつなぐイベントの開催など、実体験を通じて食のシステムを学ぶことができます。

コロナ禍の影響で中断を余儀なくされた年もありましたが、2021年に再開。再スタートにあたり、小林さんは取り組みを見直し、現代農業における「価値」のあり方を追求する要素を取り入れたいと考えました。そこで、長年行ってきたマルシェに加え、生産者と消費者が持続可能な暮らしを共に模索する場として、北海道の未来の農業、農村、食づくりに取り組んでいる人々を表彰する審査会「アワード」を導入しました。

学生たちの手による「北大マルシェアワード」

再構築された「北大マルシェアワード」では、毎年この授業を履修している学生たちが企画や広報、運営を担当しています。テーマの選定からアワード登壇者の招待、2日間のマルシェ開催まで一貫して手掛けているそうで、小林さんは「僕は最初の方向性を学生に示すだけ。あとは見守っています」と笑います。

「20年後の農業はどうあるべきか?」という小林さんからの問いのもと、今年も学生たちがテーマを選定しました。農学院修士課程1年の森本真依さんが中心となり、持続可能な農業を実現するために必要な要素について議論を重ね、「変わる農業、動かす人」というテーマを掲げました。

今年の実行委員で代表を務めた森本真依さん(農学院修士1年)今年の実行委員で代表を務めた森本真依さん(農学院修士1年)

さらにこのテーマに基づいて、「消費者倫理」と「環境」の2部門を設定しました。消費者倫理部門では、価格以外の価値を伝えることで消費者の意識を変える団体に着目。環境部門では、不耕起栽培や有機農業などを通じて、持続可能性を目指す生産者に焦点を当てました。農学部大講堂で行われた最終審査には、6団体がファイナリストとして登壇し、自身の活動や信念を通して農業に変革をもたらそうとする取り組みを紹介しました。

ファイナリストと審査員、運営に携わった学生らファイナリストと審査員、運営に携わった学生ら

消費者倫理部門最優秀賞は、柳田双美さんが代表を務める団体「エシカルンテさっぽろ」に贈られました。エシカルンテさっぽろは、「みんなの笑顔がめぐる未来へ」をテーマに、食×農×環境教育やエシカル(倫理的)な暮らしを広める活動をしています。エシカル給食も推進していて、最終審査のプレゼンテーションでは「小さな選択が未来を変える」というシンプルで力強いメッセージで訴えかけました。

環境部門では、和田徹さんが営む「やむべつメーメーファーム」が最優秀賞に選ばれました。リジェネラティブ農業を実践するこの農場では、従来の投入集約型農業のあり方に疑問を投げかけ、被覆作物の栽培や不耕起栽培などを実践しています。化学肥料や外部資源への依存を減らすことで、より健全な土壌づくりや地域コミュニティの強化を図り、持続可能性と生産性、経済性の共存を目指しています。

つながり、広がる協働の輪

北大マルシェアワードを運営した学生北大マルシェアワードを運営した学生

16年前に教育の一環として始まった取り組みは今や活力あふれるネットワークとなり、大学のイベントにとどまらず、北海道の生産者と消費者、学生と卒業生をつなぐコミュニティとして成長を続けています。

「マルシェ」と「アワード」のハイブリッドとなってから、今年で5年目となった「北大マルシェアワード」。対話と協働の輪を着実に広げる中、学生たちは毎年その原点を継承し、現場での出会いと会話を大切にしています。たくさんの人々と多様な考え方をつなぐ北大マルシェアワードから、土地と暮らしを結ぶ食の役割を語らい、20年後の農業につながる対話が生まれています。

再編・撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美

この記事の原文は英文です(From Market to Social Movement: Hokudai Marché Award)