<写真>北大の半導体ビジョンについて説明する寳金清博総長
半導体フロンティア教育研究機構(IFERS/アイファース)は6月2日(火)、半導体の最前線を報告するシンポジウムを開催しました。第1部の「本音で語ろう北大の半導体」では、半導体メーカー「Rapidus」の技術部門トップを招き、半導体やAI研究に携わる北大の教授陣とともに、大学と企業がどのように未来の半導体産業を切り拓くのかを議論しました。続く第2部では、北大が描く半導体ビジョンが寳金清博総長から初めて示され、持続可能なWell-being社会の実現に向けた展望が語られました。
第1部「本音で語ろう北大の半導体 -徹底討論:北大教授陣×Rapidus CTO」
北海道大学では今年度から、大学院共通授業科目「半導体研究の最前線を知る〜北大が描く未来の設計図」が開講しており、第1部はその1回目の講義を兼ねて実施されました。
初めに、半導体メーカー「Rapidus」最高技術責任者の石丸一成さんが講演。オンラインや会場で多くの学生が傾聴する中、「半導体が拓く未来と北大への期待」と題して、社会インフラとして重要性を増す半導体を取り巻く現状や展望について語られました。石丸さんは、半導体を取り巻くエコシステムの構築に向け、色々な学問からアプローチし、半導体を通じて人々に貢献できると話し、学部を問わず半導体分野に関心をもってほしいと呼びかけました。
石丸一成・Rapidus最高技術責任者また、学生に向けて「北大のフロンティア精神を活かし、『鮭』のように一度世界へ飛び出し、経験を積んで再び北海道に戻り、次世代の半導体産業を担う人材として活躍してほしいです」と激励しました。
次に、北大IFERSの半導体研究開発戦略室長の秋永広幸さんは、異なる材料を組み合わせて従来の半導体では実現できなかった性能や機能をもつデバイスを作る「異種接合デバイス研究」について説明しました。また、半導体のサイズの「微細化」と、違った機能を一つのチップに載せていく「多機能化(異種接合)」について言及し、「原子のスケールで半導体を作るのはまさに挑戦ですが、北大が化学や分析、量子などさまざまな分野から自分たちの強みを生かし、北海道から世界を先導する半導体研究を実現したいです」と話しました。
続く座談会では、石丸さん、秋永さんと、北大の半導体研究に携わる情報科学研究院の浅井哲也教授、工学研究院の島田敏宏教授、哲学が専門でAI(人工知能)との異分野融合に取り組む文学研究院の田口茂教授が登壇しました。モデレーターは工学研究院の太田泰彦特任教授が務めました。工学・化学・AI・哲学など多様な観点から半導体の最前線について討論し、学際的連携の重要性を語りました。
研究者らは、見えない世界を扱う半導体開発の難しさや、異分野の知が交差することで生まれる発想の飛躍や新たなアイデアを創出する「妄想力」の大切さを強調しました。学生には、失敗を恐れずに海外経験や多様な人との議論を通じて視野を広げ、北大ならではの学際環境を活かして成長してほしいとメッセージが送られました。
第2部「北大半導体ビジョンとIFERSミッション-半導体に命を吹き込み、未来を切り拓く」
第2部では、寳金清博総長が登壇し、半導体分野の研究や人材育成の方向性を示す「北大半導体ビジョン」を公表しました。半導体を「つくる」「つかう」「つなぐ」を柱に、教育から研究、社会実装までを一体的に進めることで、次世代の半導体製造を目指すRapidus社と共に、北大が北海道の半導体産業の中核拠点を目指すという内容です。
寳金総長は「ここ数十年の間で半導体が驚異的なスピードで劇的に世界を変えてきました。半導体でどういう社会を目指すのか、どういう人を育てたいのかということを、北大として示していく必要があります」と説明。全学ビジョンである「HU VISION 2030」と連動して、効率や生産性だけではない価値を見据え、人の「温かみ」を持った半導体が活躍するWell-being社会の実現を目指すとしました。
半導体フロンティア教育研究機構(IFERS)の機構長を務める石森浩一郎副学長は、IFERSについて、北海道大学全体の半導体に関する方針の策定や、半導体教育、産学連携を推進する組織であると説明。「半導体はつくるだけではなく、どう使うかが重要です。北海道の地域課題は、新しいユースケースになる可能性があります。人・大学・産業・地域・世界を結び、半導体のエコシステムを形成します」と話しました。
半導体への挑戦を通して、北海道大学はどのように地域と関わり、どんな未来を切り開いていくかを示した「北大半導体ビジョン」。北海道大学の半導体への取り組みは、Rapidusとの連携にとどまらず、AI倫理などの重要な領域を含め、これらの技術に関わる社会的課題についても議論を進めていきます。
【文・写真:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香】


