研究広報を通して北大のいまを伝える~北大生がインターンシップから学んだこと~

北海道大学広報課では、学生の人材育成と充実した情報発信のために、広報特派員制度(広報インターンシップ)を設けています。今回、この制度を利用して2019年11月から3ヶ月間、学術国際広報担当のインターンに参加した越後谷駿さん(当時、生命科学院修士1年)のレポートをお届けします。インターンを通じてどのような経験が得られたのでしょうか。

修了証を手にする越後谷さん(写真左から2人目)と広報インターンシップを担当した川本学術専門職(左端)、乾広報課長(右から2番目)、菊池事務補佐員(右端) 修了証を手にする越後谷さん(写真左から2人目)と広報インターンシップを担当した川本学術専門職(左端)、乾広報課長(右から2番目)、菊池事務補佐員(右端)

----越後谷駿さんのレポート----

インターンシップ参加のきっかけ

去年の4月、私は生命科学院修士課程に進学しましたが、将来どのような道に進むか、あまり具体的には考えていませんでした。博士課程への進学を迷っていた時、研究者以外の仕事も知りたいと思い、これまで携わってきた科学や研究と関連した職を考えました。学部3年生の時に科学技術コミュニケーション教育プログラム(高等教育推進機構 科学技術コミュニケーション教育研究部門 CoSTEP)を受講していたこともあり、研究や科学を伝える広報課でのインターンシップに参加しました。

アカデミックファンタジスタ事業

学術国際広報担当の主な役割は、研究者やその研究活動の紹介を通じて北海道大学の魅力を発信することです。そのうち、アカデミックファンタジスタ事業では、北海道大学で最先端の研究を行う研究者自身が、研究活動を社会に対してわかりやすく伝えることを目的に、高校生を対象に出前授業等を行っています。北海道新聞社と協力し2012年度から継続的に実施しています。

筆者が撮影したアカデミックファンタジスタ(出張講義)の様子 筆者が撮影したアカデミックファンタジスタ(出張講義)の様子

インターンシップに参加する前は、出前授業を取材することが研究広報の仕事だと思っていました。ところが実際には、研究者との日程調整や随行、記録、講義レポートの作成、北海道新聞社との調整など、出前授業の運営全体を担っていることを知りました。また、講義中には、研究者のサポートや撮影、録音、メモ取りなど、様々なことを行います。複数の教室で同時に授業が行われることもあり、限られた人員で効率的に動くことが求められていると感じました。さらに、休憩時間に行われていた名刺交換も、次の仕事につながる重要な活動なのだと思いました。
講義の様子は北海道大学のFacebookやホームページに随時更新されています。私もインターンシップ中に2本の講義レポートを執筆しました。講義内容をまとめるだけではなく、背景知識も踏まえて、初めて聞く人にも伝わる言葉を模索したり、構成を考えたりと、何度も推敲を重ねました。

■インターン中に執筆した講義レポート

医学研究院 工藤與亮教授「MRIでアルツハイマー病の早期診断に挑む」

獣医学研究院 今内覚准教授「動物の難病に対する創薬研究」

61次南極地域観測隊の取材

学術国際広報担当では、ウェブ記事を通して北海道大学の研究を紹介しています。私は、南極に興味を持っていたこともあり、第61次南極地域観測隊のインタビュー記事の作成に携わらせていただきました。隊長に選ばれた青木茂准教授をはじめ、低温科学研究所に所属する隊員の方々を取材し、記事を執筆しました。同隊は、20191127日に南極へ向けて日本を出航し、約4か月の観測を行いました。
この活動では、旬を逃さないために急いで記事を仕上げる大変さがありました。また、観測隊が日本を出発してしまうと連絡がとりにくくなるため、記事確認のためにも早く完成させる必要がありました。幸いこれらのハードルを乗り越え、予定通り観測隊の出発日に大学ホームページに記事を公開することができました。インタビューでは、研究のより詳細な部分や、観測隊の裏話などもお話していただきましたが、実際に記事を書く際には、北海道大学の魅力や社会とのつながりを軸に公式サイトに掲載すべき内容を絞りこみました。もちろん研究に興味を持ってもらうことや、研究内容を伝えることも大切ですが、広報課にはその先に北海道大学のいまを伝える役割があるのだと感じました。

第61次南極地域観測隊への取材の様子。右が筆者。 第61次南極地域観測隊への取材の様子。右が筆者。

■インターン中に執筆したインタビュー記事

北大から南極の海洋観測へ~青木隊長とともに4名の教職員・学生がトッテン海域に出航~

イベントの運営補助

インターンシップ期間中に開催された広報ワークショップ(Japan PIO Summit 2019)、サイエンスレクチャー、研究者のためのスキルアップセミナーの運営補助を行いました。
Japan PIO Summit 2019は、大学や研究機関が行う広報戦略の立て方や、その効果の測定方法について、日本全国から広報担当者などが集まり議論を交わす大きなイベントでした。私は、企画には携わっていませんが、受付業務を担当しました。運営補助を通して、イベントの企画は多くの人を巻き込んで行っているのだと感じました。様々な背景を持った人達と協力して運営するため、考え方や重点の置くところが異なる場合があり、連携して仕事をする際の難しさを知りました。

Japan PIO Summit 2019の受付を担当しました Japan PIO Summit 2019の受付を担当しました

最後に

私はこのインターンシップで、コンテンツ制作を通じて情報発信のスキルを磨くだけでなく、普段は見ることができない広報の現場を知ることもできました。約3か月間、広報課で実際に働き、現場では少人数で多様な仕事を同時に進めていることを知りました。一つの企画に全力を注げれば理想ですが、仕事としてやっていく以上、限られた時間の中で折り合いをつけていく必要も生じます。
そして、大学の研究広報の仕事は、直接的な利益や成果が見えにくい側面もあります。研究広報インターンを担当してくださった川本真奈美さんは、「この仕事をする上では、一部の数値的な成果だけにとらわれず、組織のため、研究者のために様々な情報発信に挑戦し続けることが大事。ときには、忍耐力とお節介精神が必要かもしれません。」と話してくれました。マニュアルを超えた積極的な広報を行うために必要な精神なのかもしれないと感じました。
また、インターン生として様々な分野の研究者に会う機会もありました。自分の専門分野から一歩離れて研究に向き合うことで、今後も研究していきたい気持ちが高まり、博士課程への進学を積極的に希望するようになりました。今後、研究者の道に進んだ際には、今回のインターシップで経験したことを活かしていきたいです。どんな場面であっても、研究内容のわかりやすさや正しさ、面白さを伝えることは大切です。ただ内容は同じであっても、研究費の申請書では研究方法や実現性にも重きを置く、分野を超えた交流の場では背景や関連性も伝える、広く社会に発信する場面では応用例や個人的な視点にも配慮する、といった相手に合わせる工夫をしていけたらと思います。
研究広報インターンを担当してくださった川本真奈美さん、菊池優さん、そして広報課の方々には大変感謝いたします。ありがとうございました。

研究者のためのスキルアップセミナーでの一枚。広報課の職員や講師の方々と 研究者のためのスキルアップセミナーでの一枚。広報課の職員や講師の方々と

(北海道大学総務企画部広報課 広報特派員
生命科学院修士課程 1年(当時)越後谷 駿)