未来の物質を叩き出す

工学研究院 / WPI-ICReDD 伊藤 肇 教授

工学研究院 有機元素化学研究室 / WPI-ICReDD 副拠点長の伊藤肇教授らは、機械的な力によって化学反応を引き起こせることを発見しました。

未来の物質を叩き出す(工学研究院/WPI-ICReDD 伊藤 肇 教授)

化学反応を起こすには、有機溶剤で分子を溶かして混ぜ合わせ、温めたり光を当てたりするのが一般的です。しかし、有害な有機溶剤や多くのエネルギーが必要なこの方法は、安全性やコスト、環境への影響といった面で課題があります。伊藤教授の研究チームは、すりつぶす、圧力をかけるなどの「機械的な力」で化学反応を起こす、メカノケミストリーと呼ばれる研究分野を開拓しています。また、有機溶剤を使わずに、固体中で反応を促進させる方法にも着目しています。

工学研究院 / ICReDD 副拠点長 伊藤肇教授 工学研究院 / ICReDD 副拠点長 伊藤肇教授

伊藤教授の研究室では2007年から、砕く、擦る、ひっかくといった機械的な刺激に反応して色を変える結晶の開発を続けてきました。これらの物質は、バイオイメージング用の試薬やパスポートのセキュリティーインクなどへの応用が期待されています。

機械的な刺激に反応して色を変える結晶

2019年、伊藤教授らはメカノケミストリーを大きく前進させる発表をしました。圧力を加えると電気を生じる「圧電物質」を使うと、機械的な力によって有機化合物の化学反応を誘導できることを明らかにしたのです。圧電物質とは安全かつ安価な物質で、ガスコンロやマイクといった身近なものにも使われています。ボールミルと呼ばれる粉砕機で、圧電物質と有機化合物の混合物に圧力を与えると、合成化学において重要なアリール化やホウ素化といった結合反応が起きました。

ボールミル

さらに、ビニール袋に入れた混合物をハンマーで叩くだけでも、反応が引き起こされることがわかりました。機械的な力を加えることで圧電物質が電気を生み、それによって分子が活性化し、化学反応が促進したのです。

「この革新的な方法により、有害な有機溶剤の使用を減らし、より簡便で低コスト、低環境負荷の化学反応を開発できる可能性があります。機械的な力を駆動力にした新たな化学反応を開発すべく、今後も研究を続けていきます」と、伊藤教授は語りました。

この記事の原文は英語です
再編:総務企画部広報課 学術国際広報担当 菊池 優