【動画公開】うしお丸3世が竣工!

<写真>竣工したうしお丸3世

北海道大学水産学部附属練習船「うしお丸三世」竣工披露式

2022年11月4日、北海道大学水産学部が所有する練習船うしお丸の竣工披露式が、函館市国際水産・海洋総合研究センターで行われました。初代うしお丸は1971年に建造され、その後1992年に建造されたうしお丸2世に続き、今回は老朽化に伴う3世の建造となりました。うしお丸3世は、先代よりひと回り大きくなり、全長45メートル、総トン数262トン、定員33名の規模を誇ります。航行速度や安定性が増したほか、数多くの最新鋭の研究機材を積んでいます。女子学生や女性研究者の利用増加に対応し、居住空間にも多くの配慮がなされています。

テープカットの様子テープカットの様子

竣工披露式では、寳金清博北海道大学総長が関係者に感謝の意を伝えるとともに、「うしお丸を人類共通の財産である海洋の持続可能な利用、また、そのための人材育成に役立てていきたい」と話しました。続いて、文部科学省高等教育局長の池田貴城氏が祝辞が贈り(代読)、北海道大学水産学部代船建造小委員会委員長の向井徹さん(水産科学研究院 教授)が造船の経過報告を行いました。

竣工披露式で挨拶する寳金清博北海道大学総長竣工披露式で挨拶する寳金清博北海道大学総長

北海道大学水産学部は、おしょろ丸、うしお丸の2隻の練習船を所有し、実習、調査、研究に活用しています。大型のおしょろ丸は大人数の学生を乗せて基礎実習を行う「洋上のキャンパス」であるのに対し、うしお丸は高度で専門性の高い教育・研究を行う「海上移動研究室」と位置付けられます。また、おしょろ丸は北極域などへの遠洋航海も行うのに対し、うしお丸は東北以北の亜寒帯沿岸に特化しています。

代船建造小委員会委員長の向井さん(水産科学研究院 教授)は、竣工したうしお丸3世に乗船し、「感無量です。(うしお丸を活用して)良い人材を育てていかなくてはという思いです。海の厳しさも体感してもらいつつ、海の豊かさを守っていくような人に育ってほしいと思います」と話しました。向井教授が専門とする魚群探知機やスキャニングソナーも最新の設備が導入され、表層の魚の探知など、より詳細な解析ができるようになったといいます。「現在の技術では難しい、魚種の判別ができる魚群探知機を開発するのが究極の夢です」と語りました。

船内の海洋観測室で語る向井徹教授(代船建造小委員会委員長)船内の海洋観測室で語る向井徹教授(代船建造小委員会委員長)

代船仕様策定委員会委員の高津哲也さん(水産科学研究院 教授)は、「新型コロナウイルスの影響で予定より時間がかかりましたが、完成した船を見てようやく安心できました」と話します。世界人口が増え続ける中、水産資源を持続可能な形で活用する必要があり、そのために各魚種が自然界で増減する仕組みを明らかにしたいと言います。「皆さんが普段食べている魚でも増減の仕組みはほとんどわかっていません。自然の余剰生産分を人が上手に活用し、資源を枯渇させないために、一つ一つの魚種を研究する必要があります。水産学に終わりはありません」。

船上で水産資源について語る高津哲也教授(代船仕様策定委員会委員)船上で水産資源について語る高津哲也教授(代船仕様策定委員会委員)

うしお丸 船長の坂岡桂一郎さんにもお話を伺いました。「新しいうしお丸は省エネでありがならスピードが出ます。緊急時に全速力で港に戻れることは乗船者の安全を守る上でも重要なことです。また、船の安定性が良くなりましたので、天気の影響を受けにくく、出航できる日数が増え、その分、実習や調査研究に貢献できると思います」。船の上で多くの学生を見てきた坂岡さんは、「長い航海実習だと、船に乗った時と降りる時で顔が変わります。きっと自信をつけるんですね。演習林も含め、フィールドに強い北海道大学にはそういった経験ができる環境が身近にあるので、是非活用してほしいと思います」と話しました。

操舵室の坂岡桂一郎うしお丸船長操舵室の坂岡桂一郎うしお丸船長

水産学部長・水産科学研究院長の都木(たかぎ )靖彰さんは、「船の一番良いところは、陸を離れて隔絶された空間ですので、皆で協力し合わないと研究もできないし、生活もできません。特別な経験ができる場所です。専門的な技術だけでなく、チームで活動することを学んで欲しいと思っています。また、北海道大学は留学生も多く、船の上で国際的な経験を得るチャンスもあるだろうと思います。海が好きな人は、是非水産学部にチャレンジして欲しいです」と話します。また、「北海道大学の前身である札幌農学校の初代教頭が説いた「Lofty ambition(高邁なる野心)」を実現するような船にして行きたいです」と意気込みを語りました。

都木靖彰水産学部長・水産科学研究院長都木靖彰水産学部長・水産科学研究院長

文:国際連携機構/広報・社会連携室 南波直樹
写真:広報課 学術国際広報担当 長尾美歩