【北大道新アカデミー】2023年11月に6名の研究者が講義を実施

2023年11月に、今年度後期の北大道新アカデミーの第6〜8回の講義が行われました。同アカデミーは、学外の社会人を主な対象としたリカレント教育プログラムで、文系コースと理系コースに分かれ、それぞれ8回の講義で構成されています。

文系講座

文系コースは、法学研究科附属高等法政教育研究センターが担当します。総合テーマは「法のコンパス:グローバル社会の新秩序形成に向けて」です。ロシアのウクライナ侵攻や、気候変動など、日々刻々とグローバルに展開する国際社会の問題をより深く理解するための視座を提供します。

第6回「法の視点から見る『チャイナリスク』」法学研究科 准教授 徐 行

後期の文系コース第6回目は、比較法・中国法を専門に研究する徐行さんが担当しました。この講義では、中国共産党を頂点とする独自の法体系に焦点を当て、中国共産党と法の関係がどのような影響を及ぼしているかを詳しく解説しました。中国の法と政治の複雑な関係、国家権力の性格、最近の改正反スパイ法の施行に関する洞察を深め、日本が中国に直面するリスクに適切に対処するための検討を行いました。 受講者からは、「中国の実態がよく分かりました。日本政府も日本国民も中国のことをよく勉強しなくてはならないことを痛感しました。」「中国での法体系の紙面上の体系と実態との違いが、写真のデータや先生の説明でこれまで以上によくわかりました。」といった多数の感想が寄せられました。

日時:2023年11月4日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学理学部大講堂
参加者:35名

第7回「グローバル経済のための私法秩序の形成」法学研究科 教授 曽野裕夫

後期の文系コース第7回目は、民法・国際取引法を専門に研究する曽野さんが務めました。講義では、私法統一とは何かを中心に、歴史的な背景を交え、国境を越える取引についての私法統一を担う主要な国際機関の話題にも触れながら、グローバルな視点から私たちの身近な課題に落とし込んだ90分間の講義が行われました。受講者からは「ロシアウクライナ問題や国際通貨の問題などが私法統一に影響はないのでしょうか」や「民間企業の個別契約は今どのように行われているのでしょうか」など、多くの質問が寄せられました。 曽野さんの講義は、受講生がデジタル化に伴い科学技術が発展する中で起きる新たな課題などに対して、私法統一の担う重要性を考える機会となりました。

日時:2023年11月11日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学理学部大講堂
参加者:35名

第8回「日本の人権保障の特徴」法学研究科 教授 佐々木雅寿

2023年11月25日、今年度後期最後の北大道新アカデミーが開かれました。文系コースの講師は、佐々木雅寿さんです。カナダ憲法を専門にしている佐々木さんは、人権保障が進んでいる国と比較しながら、グローバルな観点と歴史的変遷を交えながら、日本の人権保障の特徴について講義しました。 これまでは人権に関して、憲法学者と最高裁との意見が対立することが多かったものの、2000年代から最高裁の考え方が少し変化してきているといいます。佐々木さんは、双方による対話的違憲審査や、その後の法律の改正も進めていくことが重要だと指摘しました。 受講者からは「人権について基本的な講義を初めて聞き、目からウロコでした。違憲判決の後の国会の動きに注目していきます」「レジュメの内容が濃かった」「講義レジメ、今後の自己学習の拠り所にしたいと思います」といった感想が寄せられました。

日時:2023年11月25日(土)13:00-14:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:35名

理系講座

理系コースは、獣医学研究院の研究者が講義を行います。総合テーマは「『動物のお医者さん』のその先へ」です。人を含む地球上の動物と生態系の健康を守る「One Health」について、最先端の研究を通じてわかりやすく紹介します。

第6回「動物たちからのヒントを人の健康に役立てる〜熱を作る不思議な細胞・褐色脂肪細胞」獣医学研究院 准教授 岡松優子

後期の理系コース第6回目は、代謝学を専門に研究する岡松優子さんが担当しました。 この講義では、冬眠動物から発見された熱を生み出す褐色脂肪細胞のメカニズムを解説しました。褐色脂肪細胞の研究は肥満とその合併症の予防や治療への貢献が期待されています。また過去のノーベル賞受賞者のインタビューを通じて、基礎研究の重要性にも言及し、基礎研究への投資と支援が科学の進歩にとって非常に重要であることを説明しました。 受講者からは、「肥満のメカニズムやヒトの褐色脂肪細胞についてとても分かりやすく説明して頂き、大変勉強になりました。ありがとうございました。」「脂肪(組織)は悪いイメージしかなかったが、役割を知ったことで変わった。とにかく減らすことを考えていたが、バランスだったり、必要量だったり、身体にとって大切なものでもあることを教えてもらいました。」といった多数の感想が寄せられました。

日時:2023年11月4日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学理学部大講堂
参加者:64名

第7回「毒と動物の攻防」獣医学研究院 教授 石塚真由美

後期理系コースの第7回目は、毒性学、環境毒性学が専門の石塚真由美さんが行いました。私たちの身近な食品に含まれている毒についての話や、毒のあるユーカリを食べるコアラ、ヘビやトカゲといった体内に毒を持つ生物についての講義が展開されました。 クイズを通じて、コアラが2m近い盲腸を持ち、微生物の働きがユーカリの毒性成分の分解を助けていることを伝えるなど、研究内容をわかりやすく伝える工夫が随所に施され、受講生はリラックスした雰囲気で講義を受けていました。 受講生からは「人間は間違って毒のある植物を食べてしまうが、動物は間違って食べたりしないのでしょうか」や「毒をもっているとアピールする生物とアピールしない生物の違いはなんでしょうか」など、活発な質問が飛び交っていました。

日時:2023年11月11日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学理学部大講堂
参加者:64名

第8回「エキノコックスという寄生虫〜その生態と北海道での歴史、そして彼らとのつきあい方」獣医学研究院 教授 野中成晃

後期の理系コース第8回目は、寄生虫学、エキノコックスを専門にする野中成晃さんが担当しました。エキノコックスはもともと北海道にはおらず、複数回にわたって異なる系統のエキノコックスが北海道に入ってきた、といった基本的なお話がまずありました。そして、徐々に患者数が増加し続けていること、10~20年かけてゆっくり成長するため発症がおそいこと、そのためどこで感染したかわからないといった難しさが説明されました。最後に、そのような状況における感染防止のための基本対策についてお話ししました。 受講者の中にはキツネが身近にいる方も多く、関心は非常に高かったようです。「キツネからうつる"エキノコックス"について改めて学ぶことばかりで大変勉強になりました。北海道は自然が豊かで貴重な動物が生存していますが、感染症対策も含め、ヒトとどう共存していくべきか考えるよい機会になりました」「とても分かりやすい説明、資料でした。さらに2、3時間は聞きたい講義でした」といった感想が寄せられました。

日時:2023年11月25日(土)15:00-16:30
会場:北海道大学文系講義棟
参加者:64名

【文・写真:大学院教育推進機構リカレント教育推進部】

北大道新アカデミーとは

北大道新アカデミーは、地域の「知」のために、本学と北海道新聞社との包括連携協定に基づき、大学院教育推進機構リカレント教育推進部がコーディネーション行い、(株)道新文化センターと連携し実施する、学外の社会人を主な対象としたリカレント教育プログラムです。北海道大学 寳金清博総長および北海道新聞社 宮口宏夫社長からの、北大道新アカデミーに対するメッセージはこちらです。

北大道新アカデミー 2023年度 後期講座 理系・文系