北大の学びに触れる②―オープンキャンパス2024(文学部)

〈写真〉西洋史学研究室のツアーの様子(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香)

令和6年度オープンキャンパスが、8月4日(日)、5日(月)の2日間、札幌・函館の両キャンパスで開かれました。1日目は小学生から参加できる「自由参加プログラム」が、2日目には「高校生限定プログラム」が実施され、学部などが企画した説明会、模擬講義やゼミ、実習や実験、見学会、個別相談会などのプログラムに多くの高校生たちが参加しました。開催当日は保護者なども含め、大勢の参加者でキャンパスが賑わいました。オープンキャンパスの様子を、3回にわたってお伝えします。

 2日目に各学部などで行われた「高校生限定プログラム」では、高校生が大学のゼミを体験したり、実験や実習に参加したりしました。 文学部では、4つの体験ゼミに計62人の高校生が参加しました。体験ゼミ「少数言語はどうやったら守れるのか?-言語維持について考えてみよう」では、文学研究院・言語科学研究室准教授の菅井健太さんが講義しました。菅井さんは、少数言語について、ある国家の領域で相対的に少ないグループの国民によって伝統的に用いられ、公用語ではない言葉であると解説し、「世界の言語は、数え方にもよりますが5000~7000存在し、そのほとんどが近い将来失われると予測されています」と話しました。

言語科学研究室の菅井健太准教授(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美)
言語科学研究室の菅井健太准教授(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美)

菅井さんは、自身が調査対象にしている東ヨーロッパ・ルーマニア国内の村に住むブルガリア系住民について、母語のブルガリア語を使用する人が少なくなり、ルーマニア語を話すようになっている理由について、参加している高校生に考えを求めました。高校生からは「生活に不便だったから」「(少数言語の)母語を話すことが差別や不利益につながってしまうから」「親が様々な理由で子どもに母語を伝えなかったから」などと活発な意見が出ました。

体験ゼミを受講する高校生(撮影:長谷川 亜裕美)

体験ゼミを受講する高校生(撮影:長谷川 亜裕美)

菅井さんは、「少数言語は守られるべきなのか?という問いもありますが、言葉は単なるコミュニケーションの手段や道具だけではなく、その言葉を話す民族の象徴であり、母語は自分が何者なのかという問いにも結び付くかけがえのないものなのです」と話し、ゼミを締めくくりました。 参加した神奈川県の高校2年生の女子生徒は「小さいころから方言が好きで言葉に関心をもつようになり、少数言語であるアイヌ語を学べる進学先はここしかないと思って北大を見学に来ました。私も、少数言語の話者にインタビューしてみたいです」と目を輝かせていました。

このほか、文学部では各研究室の案内ツアーもあり、高校生たちはグループに分かれて各研究室をまわりました。

文化人類学研究室のツアーの様子(撮影:齋藤有香)
文化人類学研究室のツアーの様子(撮影:齋藤有香)

考古学研究室教授の高瀬克範さんは、道央で発掘した約2000年前の土器を片手に「平安時代などの文献に書かれているのは天皇や貴族の生活で、歴史のごく一部。庶民の生活が知りたいなら、土器の発掘など考古学的な手法が大事です」と話しました。

考古学研究室の高瀬克範教授(撮影:齋藤有香)


考古学研究室の高瀬克範教授(撮影:齋藤有香)

静岡県から来た高校3年生の男子生徒は「北大の文学部は、漠然と思っていたイメージよりずっとフィールドワークが多くて驚きました。大学で何を学びたいか少し具体的になり、来てよかったです」と笑顔を見せました。

【広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香】