<写真>田植えに参加した学生たち(撮影:広報課 広報渉外担当 長尾 美歩)
2026年に創基150周年を迎える北海道大学。札幌キャンパスにある水田で酒米を育て、日本酒を造ろうという挑戦が始まりました。この日本酒造りプロジェクトは、北大と日本清酒株式会社のコラボで行われるもので、学生も参加し、田植えから収穫、醸造まで携わります。5月下旬、取り組みのスタートとなる田植えが行われました。

150周年を記念して製造する日本酒の名称は、「北の閃(ひらめ)き」です。2026年3月の販売を目指し、酒造好適米とされる北海道生まれの酒米「きたしずく」で造ります。昨年、この事業の準備として試験的に開発した「奥智」は、米の収量を十分に確保できず新十津川産の米をブレンドしましたが、今回の挑戦ではオール北大米での醸造を目指します。
5/26(月)午後、札幌キャンパスのポプラ並木近くに、北大の学生や職員が集まりました。今回のプロジェクトには日本酒造りに興味のある学生20名が参加していて、田植えに集合したのは、そのうち5名。はじめて顔を合わせるメンバー同士ということもあり、少し緊張した面持ちです。

学生の指導を担当するのは、北方生物圏フィールド科学センター技術専門職員の橋本哲也さんです。橋本さんは、キャンパス内にある生物生産研究農場で、稲をはじめトウモロコシやジャガイモといった畑作関係も担当しています。

橋本さんによると、札幌キャンパスの水田には地下水を使っているそうです。地下水は水温が低いため、そのまま使用することはできません。そこで、汲み上げた水を一旦遊水池に溜め、広い面積で日光に当てて温めてから水田に利用するといいます。橋本さんは「北海道の稲作は寒さとの戦い」と説明しました。

遊水池の先にある温室では、苗が育てられていました。北方生物圏フィールド科学センターでは、寒い地域でも苗が育ちやすいという成苗ポットを採用しています。長方形のポットには1枚あたり448個の穴があって、その1つ1つで苗が育てられます。今回の酒造りでは、昨年の4倍となる40アールの水田で酒米をつくるので、成苗ポット約200枚分の苗を植えるそうです。
通常、田植えは機械で行いますが、学生に手植えを経験してもらおうと、橋本さんが苗の持ち方や植え方、どのくらいの間隔で植えるのが良いかなど丁寧に説明しました。

成苗ポットから小さな鉢へ苗を移した後は、いよいよ田植えの開始です。水田に入り、学生たちが戸惑ったのは足の使い方。「思った以上に難しい」と、泥の中での足運びに苦戦する様子が見られました。しかしそれも初めのうちだけで、徐々にコツを掴み、しばらく経つと楽しげな声をあげながら田植えをする姿がありました。


農学部3年の星野さんは「農学部の実習で田植えは経験したのですが、この取り組みでは収穫もできて、しかもお酒になるところまで関われると知ってチャレンジしたいと思いました。作業自体も魅力ですが、完成したお酒を飲むのがとにかく楽しみです」と、期待に胸を膨らませました。

田植えを終え、すっかり打ち解けた様子の学生たち。最後は清々しい笑顔で撮影に応じてくれました。次の取り組みは、9月に行われる稲刈りの予定です。創基150周年に向けて、学部を超えて学生が協力し合い、職員と一体となって、挑戦を進めていきます。
【文:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美】