【記者発表会を実施】触媒技術を活用した「フードロス削減コンソーシアム」を設立 (北海道大学COI『食と健康の達人』拠点)

プラチナ触媒を用いた食品の鮮度保持技術を活用し、生産から流通、販売における食品廃棄物の課題解決を目指した「フードロス削減コンソーシアム」が設立されました。コンソーシアムに参加するのは、北海道大学、北海道科学技術総合振興センター(略称:ノーステック財団)、北海道総合研究機構、セコマグループです。9月29日にフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点で開催された記者発表会では、各組織の代表が意気込みを語り、テレビ局、新聞社、雑誌社など18のメディアが参加しました。

記者発表会の様子。左から、北海道科学技術総合振興センター 土合宏明専務理事、株式会社セコマ 丸谷智保会長、北海道大学 福岡淳教授、北海道総合研究機構 田中義克理事長 記者発表会の様子。左から、北海道科学技術総合振興センター 土合宏明専務理事、株式会社セコマ 丸谷智保会長、北海道大学 福岡淳教授、北海道総合研究機構 田中義克理事長

記者発表会が行われたフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点 多目的ホール 記者発表会が行われたフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点 多目的ホール

触媒のエチレン分解技術をフードロス削減へ

本コンソーシアムの基盤となるのは、触媒科学研究所の福岡淳教授らが開発した低温環境下(0℃)でエチレンを完全酸化するプラチナ触媒の技術です。エチレンは、野菜や果物から発生し、熟成や腐敗を促進する植物ホルモンの一つです。プラチナ触媒で発生したエチレンガスを酸化させ除去することにより、野菜などの鮮度保持につながります。このプラチナ触媒の技術は、2013年に論文で発表され、家庭用冷蔵庫などにも利用されています。2019年6月から本学と株式会社セコマは「北海道大学COI『食と健康の達人』拠点」事業の一環として、加工前の野菜を貯蔵する保管庫内で実証試験を行いました。その結果、プラチナ触媒を設置した場合、保管庫内のエチレンガス濃度が減少し、野菜の傷みがおさえられるなどの効果がみられています。

倉庫などに設置し、野菜や果物の熟成を遅らせることができるプラチナ触媒 倉庫などに設置し、野菜や果物の熟成を遅らせることができるプラチナ触媒

本コンソーシアムの会長を務める株式会社セコマの丸谷代表取締役会長は、「私どものグループの漬物を製造している会社の食品保管庫を使った実証試験では、これまで使えなくなって捨てていたようなものが使えるようになり、キャベツで最大約28%、キュウリで約3%のコスト削減につながるなど、明らかな効果が得られています。今後も他の果物ではどうか、野菜を保存するためにどういった温度や湿度が適切かなど、実証実験を続けていきます。プラチナ触媒技術の活用によって、フードロス削減だけではなく、これまで野菜の鮮度保持のためにかけていたエネルギーの削減にもつながるのではないかと考えています。こうした知見を様々な方々に、様々なシーンでご利用いただくことによって北海道全体の、そして日本全体、地球規模での課題解決に貢献していきたいです。」と語りました。

挨拶する株式会社セコマ 丸谷会長 挨拶する株式会社セコマ 丸谷会長

触媒の新たな分野を切り開く

記者発表後、触媒科学研究所 福岡教授に今後の展望について伺いました。
「本コンソーシアムで、実証試験をさらに重ねるとともに、触媒を高性能化するための基礎学理の追及もしていきたいです。触媒の鮮度保持技術への応用は、とても新しい領域です。これまで、酸化反応を低温で進めるのは困難というのが常識でしたが、このプラチナ触媒は0℃でもエチレンの酸化反応を促進させ、分解することができます。低温での酸化反応が食品分野に活用できることがわかり、フードロス低減という新たな価値が見出されました。自分でも思いがけない研究の方向性があったことに非常に驚いています。まだ触媒が使われていない分野はたくさんありますので、既存の分野にとらわれず、いろいろな条件で触媒をつかってみる必要があると思っています」

今後もプラチナ触媒の高性能化に向けて研究を続けると話す福岡教授 今後もプラチナ触媒の高性能化に向けて研究を続けると話す福岡教授

フラットな産学官地域連携を推進

事務局を務める 「北海道大学COI『食と健康の達人』拠点」 の吉野正則プロジェクトリーダーは、「本拠点から生まれた研究成果やネットワークをコンソーシアムという形に発展できたことを大変嬉しく思っています。これからも地域や産業界の課題やニーズを踏まえて、様々な機関がフラットに連携できる環境整備を推進していきます。そして北海道の産業界にイノベーションを起こすことを目指し続けます。多くの方々にご参画いただければと思っています」と意欲を語りました。

本コンソーシアムの事務局を務める北海道大学COI『食と健康の達人』拠点 吉野プロジェクトリーダー 本コンソーシアムの事務局を務める北海道大学COI『食と健康の達人』拠点 吉野プロジェクトリーダー

記者発表会が行われたフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点 記者発表会が行われたフード&メディカルイノベーション(FMI)国際拠点

本コンソーシアムでは、プラチナ触媒の鮮度保持技術の実用化・普及によるフードロス削減に参画する企業会員を募集しています。関心をお持ちの企業の方は、下記窓口までお問合せください。

■本コンソーシアムに関するお問合せ先
北海道大学 産学・地域協働推進機構 FMI推進本部
フードロス削減コンソーシアム担当
TEL:011-706-9602 FAX:011-706-9607
メール:no-foodloss[at]fmi.hokudai.ac.jp
    ※[at]は@に変更してください
URL:https://www.fmi.hokudai.ac.jp/coi/

SDGsへの貢献

本コンソーシアムは、食品サプライチェーンにおけるフードロスや消費エネルギーの削減などによりSDGsへの貢献を目指しています。

(総務企画部広報課 学術国際広報担当 川本真奈美)