札幌南高校にて6名の研究者が講義を実施

10月22日(金)札幌南高等学校にて、6名の研究者が講義を実施しました。

がん細胞の動きを止めろ!
先端生命科学研究院 教授 芳賀 永

芳賀さんの研究グループでは、がんの転移を防ぐには、がん細胞の「集団浸潤」が鍵ではないかと考え、実験を続けています。腫瘍(増殖したがん細胞)が血液にのって身体のあちこちに広がることを転移と言いますが、その前段階として、腫瘍が留まるべき境界を越えて、集団で他の組織にまで染み出す「集団浸潤」と呼ばれる現象があるのです。実験の様子を映像で見せながら、最新の研究成果を伝えました。物理、化学、生物と何度も研究分野を変更しながら、自身の本当に興味のあることを追い求めてきた芳賀さん。「今の研究は心から楽しく、子供のようにワクワクしながら進めています。進路選択の際にはワクワクする気持ちを判断基準にするのもお勧めです」と話しました。

先端生命科学研究院 芳賀 永 教授先端生命科学研究院 芳賀 永 教授

金(きん)と炭素
工学研究院/化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD) 教授 伊藤 肇

有機化学をベースに様々な元素を研究し、新しくて役に立つ触媒反応、機能性材料などをつくっている、伊藤さん。冒頭では、本学にゆかりのある二人のノーベル化学賞受賞者、名誉教授/ユニバーシティプロフェッサーの鈴木章さんと、ICReDD 特任教授のベンジャミン・リストさんの業績を解説しました。続いて、金元素の他の金属にはみられない特徴的な性質を説明した後、伊藤研究室で開発された金と炭素の結合を持ち、ユニークな性質を示す様々な化合物について、映像を交えて紹介しました。最後に「こすると光る化合物」の演示実験を行うと、生徒たちから歓声があがりました。

工学研究院/化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)伊藤 肇 教授工学研究院/化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)伊藤 肇 教授

原子をあやつり新しい材料をつくる
工学研究院 教授 米澤 徹

米澤さんは、金属などを原子レベルで制御することで、新しい性質を持つ材料を生み出しています。講義ではサイズが小さくなるにつれて、反応活性が高くなったり、融点が低くなったりする金属ナノ粒子の様々な性質について解説しました。また、そうした性質を利用して、サイズや形状、原子配置を制御した金属ナノ粒子を合成し、触媒や電子部品に応用する研究に取り組んでいることを紹介しました。これまで国内外の様々な研究機関に所属してきた米澤さん。生徒たちはそうした経験にも関心を寄せていました。

工学研究院 米澤 徹 教授工学研究院 米澤 徹 教授

体に優しい高精度陽子線治療をもっと身近に
医学研究院 准教授 橋本孝之

放射線治療を専門とする医師の橋本さんは、動く部位の腫瘍にも高精度で放射線を照射することができる「動体追跡陽子線治療装置」を用いて、最先端のがん治療と研究に取り組んでいます。講義では、自身がどのように進路を選択し、放射線治療専門医になったかといった体験談を交えながら、国内の放射線治療を取り巻く現状などについて語りました。また、本学で開発された世界初の動体追跡照射技術の原理についても詳しく解説しました。

医学研究院 橋本孝之 准教授医学研究院 橋本孝之 准教授

身近な現象を数理モデルで理解する
電子科学研究所附属社会創造数学研究センター 教授 長山雅晴

長山さんは様々な現象を数式であらわす数理モデリングの研究をしています。「実は、私の扱っている数式はほとんど解けません。解くことではなく、数式から得られる情報によって現象を理解することが目的です」と話し、生徒たちを驚かせました。続いて、時間に伴って変化する現象を漸化式を用いて表す方法を紹介しました。その例として、隣り合ったロウソクの炎の動きが同期する不思議な現象を数式化し、その数式を用いると炎の動きを予測できることを示しました。生徒たちは身近な謎に挑む応用数学の魅力を感じ取ったようでした。

電子化学研究所附属社会創造数学研究センター 長山雅晴 教授電子科学研究所附属社会創造数学研究センター 長山雅晴 教授

夢のエネルギー人工光合成の実現に向けて
電子科学研究所 特任教授 三澤弘明

脱炭素社会の実現に向け、太陽光中に豊富に含まれる可視光を有効利用して化学エネルギーへ変換する「人工光合成」システムの開発に挑んでいる、三澤さん。金属ナノ粒子と半導体を組み合わせることで、半導体単独では吸収できない波長の光を吸収することに成功し、人工光合成の反応効率を改善してきました。講義では、世界のエネルギー資源量やCO2排出量といった社会的な背景にふれつつ、人工光合成技術の研究成果を解説しました。「将来どのエネルギーを利用するかは社会全体で考えていく必要がありますが、その選択肢を広げられる提案をするのが科学者の役割です」と語り、生徒たちに著書を贈りました。

電子科学研究所 三澤弘明 特任教授電子科学研究所 三澤弘明 特任教授

(総務企画部広報課 学術国際広報担当 川本真奈美、菊池優
国際連携機構/広報室 南波直樹)

日時:2021年10月22日(金)14:15~16:05(45分講義×2)
会場:札幌南高等学校
参加生徒:1~2年生 388名(重複含む)


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