札幌開成中等教育学校の生徒に5名の研究者が講義を実施

9月10日(金)、市立札幌開成中等教育学校の生徒に向けて、本学5名の研究者がオンライン講義を実施しました。

糖と生命
先端生命科学研究院 教授 比能 洋

化学が専門の比能さんは、様々な生命現象で重要な役割を果たしている糖鎖について研究しています。講義では、光合成をはじめとして糖がエネルギー循環に大きく関わっていることや、細胞の外側にある糖鎖はウイルスや毒素の標的にもなるため、人々の健康にとって重要であることなどを解説しました。また、これまで北大で培ってきた糖鎖の合成技術・解析技術をいかし、医療や医薬品開発への応用を目指した研究についても紹介しました。生徒からは、「糖が新型コロナウイルスなど身近なことに関係していることを初めて知り、興味深かった」などの感想がありました。

わかりやすく講義を進める先端生命科学研究院 教授 比能 洋さんわかりやすく講義を進める先端生命科学研究院 教授 比能 洋さん

医者はAIに勝てるのか?
医学研究院 准教授 平田健司

医師としてPET等の画像診断を行いながら、AIを用いた自動診断の研究を進めている、平田さん。AIがデータからルールを見つけていくプロセスを説明しました。さらに、実際の医療現場でのAI技術の活用方法や、医師とAIの役割分担なども紹介。最後に、AI時代に考えておくべきことについてアドバイスしました。生徒に色画用紙を使ってクイズに回答してもらうなど、オンラインならではの交流も見られました。生徒からは、今後予想されるAI時代の未来について具体的な質問が複数よせられ、「医療現場でのAIについて知る良い機会になった」との感想がありました。

講義の最後にメッセージを伝える医学研究院 准教授 平田健司さん講義の最後にメッセージを伝える医学研究院 准教授 平田健司さん

再生医療で脳を治す
医学研究院 助教 川堀真人

川堀さんは、幹細胞を用いて、脳卒中で傷ついた脳を再生する治療法を研究しています。患者の間葉系幹細胞を体外で培養・増殖し、それを脳に直接投与することで改善を図るというものです。臨床研究では、脳の後遺症が大幅に改善した例も多々報告されています。生徒からは、「実際の手術映像がわかりやすかった」「研究には終わりがなく、新たな課題を見つけ解決していくことが、新たな未来や科学を作り出していくのだなと感じた」などの感想がありました。

開成の先生や生徒たちと挨拶を交わす医学研究院 助教 川堀真人さん開成の先生や生徒たちと挨拶を交わす医学研究院 助教 川堀真人さん

いま学ぶアイヌ民族の歴史−先住民研究で世界をつなぐ−
アイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文

先住民研究が専門の加藤さんは、先住民族としてのアイヌの歴史と文化を学ぶことが、多様性を尊重する社会や国際関係の実現につながることを伝えました。生徒からは、「自分が当たり前だと思っていたことを疑うことや、人は多様で異なる考えを持っていることを意識することが、国際理解を考える上でとても大事であると気がつきました」といった感想が聞かれました。

北海道の歴史を伝えるアイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文さん北海道の歴史を伝えるアイヌ・先住民研究センター 教授 加藤博文さん

エネルギー・資源 そして放射線
工学研究院 教授 小崎 完

小崎さんは、放射性廃棄物の処分や管理などを研究しています。はじめに、ゴジラが放射性物質ウランを餌にしていると仮定し、ウランが核分裂で生み出すエネルギーの値を求め、ゴジラに必要な1日分のウランの量を示しました。これにより、普段はなかなかイメージのしにくいエネルギーのスケールを表現しました。続いて、発電の種類やそれぞれのメリット・デメリットを解説しました。最後に、放射線の歴史と特徴を語り、小崎さんが事前に届けた放射線測定器を貸し出して「身近なものに含まれる放射性物質を測定してみよう」と呼びかけました。生徒からは、「放射線は人間にとっての害であるという風潮があったが、人類にどのような利益をもたらしたのかを知ることができ、歴史を理解することも大事なのだと再認識できた」などの感想が寄せられました。

生徒からの質問に答える工学研究院 教授 小崎 完さん生徒からの質問に答える工学研究院 教授 小崎 完さん

(総務企画部広報課 学術国際広報担当 川本真奈美、菊池優
国際連携機構/広報室 南波直樹)

日時:2021年9月10日(金)13:10~14:10
対象:市立札幌開成中等教育学校
参加生徒:中学3年生,高校1年生 計189名

※今回の講義は、本学 技術支援・設備共用コアステーションと札幌開成中等教育学校が協力して実施している、インターンプロジェクトとの連携で開催されました。


Academic Fantasistaとは?

本学の第一線の研究者が出張講義や、オンライン講義などを通じて高校生に研究を伝える「Academic Fantasista(アカデミックファンタジスタ)」。2021年度はコロナ対策を十分に行って、札幌近郊の高校等を対象に17名の教員が講義を実施しています。2021年度の参加教員はこちら

当事業は、内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと、2012年度より実施しています。

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