「中国文学と異性装」北海高校へ向けてオンライン講義

文学研究院 准教授 田村容子

12月18日(土)、カデミックファンタジスタ事業の一環として、文学研究院 准教授 田村容子さんが「中国文学と異性装」と題し、北海高等学校の生徒を対象にオンライン講義を実施しました。中国文化論を専門とする田村さんは、中国の演劇・文学などの伝統を研究しています。講義では、まず「芸術写真」という演出された装いをする文化を紹介し、実際の写真を交えて伝えました。特に自身も撮影を経験した結婚写真を例に挙げ、専属のカメラマンやドライバーとともに好きなロケーションで撮影を行い、表情以外は全て思うままに加工を頼むことが出来る、と解説しました。「現代の若者にとっては"写真を加工する"ことが当たり前かもしれませんが、中国語圏の人たちは昔から"演出された写真"を好む傾向があります」と、加工して美しく見せるという中国の文化を説明します。

2010年に台湾で撮影された「芸術写真」2010年に台湾で撮影された「芸術写真」。写っているのは田村さん夫妻

その後はこのような文化を背景に生まれた「異性装」について、多角的に解説しました。異性装とは身体的性別と逆の性別の服装を身に着けることであり、中国文学の世界ではよく見られます。中国では、元来厳格な性別規範をはみ出すことは「服妖」と呼ばれて不吉とされてきましたが、その規範をあえて転倒させることで楽しむ文化が形成されていきました。この文化について絵画・写真や映画・演劇の作品映像を実際に見せ、その歴史や社会的背景も踏まえて紹介していきました。田村さんは、「社会が決める性別の規範とその規範からはみ出す異性装との密接な関わり、そして性別規範は歴史・社会の環境から作られる要素が非常に大きいということを意識してほしい」と語ります。

田村さんの著書の表紙にも、中国演劇の女形・梅蘭芳が描かれている(福地信世画)田村さんの著書の表紙にも、中国演劇の女形・梅蘭芳が描かれている(福地信世画)
(出典:田村容子『男旦とモダンガール 二〇世紀中国における京劇の現代化』中国文庫、2019年)

質疑応答では「トランスジェンダーに対して中国社会はどういう姿勢なのか」「写真を盛る文化がある中国でtiktokが誕生・流行したのは必然か」など、現代的な視点による質問も多く上がり、それらにも一つひとつ丁寧に回答しました。そうして約1時間の濃密な講義を終えました。参加した高校生からは、「初めて中国文化に興味を持った」「普段学ぶことのない内容で面白かった」など、講義内容に関心が深まったという声が多く寄せられました。

(総務企画部広報課 広報特派員 獣医学部5年 馬杉実里)

日時:2021年12月18日(土)15:00-16:00
対象:北海高等学校
参加生徒:1, 2年生 24名(オンラインにて実施)


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