「知のフィールド」シリーズ第5弾「キャンパスにより添う創造の森」では、札幌キャンパスの目と鼻の先にある、札幌研究林の実験苗畑を紹介します。農学部から歩いて10分ほどの小さな森は、100年以上も前から北海道大学の研究・教育に使われてきました。最近では、森林研究だけでなくアートプロジェクトの場としても活用されるなど、幅広い取り組みが行われています。
知のフィールド #5 北海道大学 札幌研究林 札幌試験地(実験苗畑 )「キャンパスにより添う創造の森」
かつてはその名の通り、苗木を育てるために使われていた、実験苗畑。ここで育った木々は、北海道大学の全道各地にひろがる研究林に植えられていったといいます。現在は主に、農学部森林科学科や環境科学院の研究や教育に活かされています。

この動画の前半では、長年森林科学科の研究教育に携わってきた、小池孝良さん(農学研究院 名誉教授) 、急激な二酸化炭素の増加に対して植物がどのような応答を示すのかを調査した、北岡 哲さん(農学研究院 博士研究員)、学生時代に小池さんとともに苗畑での調査に取り組んだ、ジャミー ・モーゼルさん(地球環境科学研究院 研究員)にお話しを伺いました。

苗畑を活用する学生たちも紹介しています。白鳥 充樹さん(農学院 造林学研究室 修士2年)は、ビニールハウスで柳をつかった実験をしています。八巻岳利さん(同研究室 修士1年)は、「ニレ立枯病」というニレの木の病気を媒介するキクイムシの研究をしています。

実験苗畑と札幌キャンパスの間には、石山通と呼ばれる公道が通っています。1972年に札幌で開催された冬季オリンピックに向けて、石山通が延長され、一続きだったキャンパスは分断されたのです。通りの上には一本の橋が架けられ、研究者や学生たちがキャンパスと苗畑を行き来するために使われていました。しかし、およそ半世紀にわたって活躍したこの橋は、老朽化により撤去されることになりました。2021年10月、深夜に工事が行われ、その歴史に幕をおろしました。

朴炫貞さん(科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP) 講師)さんは、キャンパスと苗畑をつないでいた橋を「アノハシ」と呼び、橋の記憶を残すプロジェクトに取り組んでいます。さらに、橋のふもとにある古い温室を「アノオンシツ」と名づけ、ギャラリーとして蘇らせました。

温室を朴さんに紹介したのは、 林 忠一さん(北大北方生物圏フィールド科学センター 企画調整室)。林さんの所属する北方生物圏フィールド科学センターは、札幌研究林 をはじめとする北海道大学の数々の研究施設を管理しており、林さんはそれら全体の広報を担っています。
時代の流れに沿って少しずつ姿を変えながら、あらゆる用途に役立てられてきた、札幌研究林の実験苗畑。いくつもの可能性を秘めたこの森は、これからも、研究者や学生たちに優しく寄り添ってくれるでしょう。

知のフィールド #5 北海道大学 札幌研究林 札幌試験地(実験苗畑 )「キャンパスにより添う創造の森」
出演:
小池 孝良(農学研究院 名誉教授)
朴 炫貞(科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP) 講師)
北岡 哲(農学研究院 博士研究員)
ジャミ― モーゼル(地球環境科学研究院 研究員)
八巻岳利(農学院 造林学研究室 修士2年 ※制作当時)
白鳥 充樹(農学院 造林学研究室 修士1年 ※制作当時)
林 忠一(北方生物圏フィールド科学センター 企画調整室 技術職員)
撮影・編集:常松 英史
撮影協力:岡 宏樹(北海道映像アーカイブス)
山本 由紀夫(エンターリム)
林 忠一(北大北方生物圏フィールド科学センター 企画調整室)
テロップデザイン:岡田 善敬(札幌大同印刷)
企画・制作:北大総務企画部広報課 学術国際広報担当
菊池 優(ディレクター・取材) 川本 真奈美(取材)
「知のフィールド」シリーズとは
北海道大学の研究・教育施設は、札幌・函館キャンパスをはじめ、道内各地と和歌山にまで広がっています。研究林や牧場、臨海実験所などの総面積は約7万haで、一大学の保有する施設としては世界最大級の規模です。「知のフィールド」シリーズは、こうした北海道大学の広大な研究・教育フィールドにスポットを当て、そこで育まれる最先端の知に迫ります。