10月25日(金)、札幌南高校にて、6名の研究者が講義を実施しました。当日の講義を受講した生徒、傍聴した教員のみなさまから、講義レポートが届きましたのでご紹介します。
「『私』の行為に潜む『他者』の影響」教育学研究院 教授 阿部匡樹
参加生徒:1年生 1回目 30名/2回目 30名
講義は、開始時に行ったアンケート結果をもとに、人間の認知がどのように働くかというお話からはじまりました。また、話している相手の視線の向きによって、反応速度が変わることも生徒に体験させながら解説しました。講義の最後では、北海道大学の教育学部では教員養成だけではなく、様々な分野の研究をしていると生徒たちへ説明されました。講義全体を通して阿部先生が研究している、知覚と運動の結びつきについての一端を学ぶことができた講義でした。参加した生徒はアンケートに答えたり、手を動かしたりなど、阿部先生の研究内容を自分の行動、体験を通して学ぶことができたように思います。なるほど、そうだったのかという気持ちになり、新しい知識を得ることの楽しさを感じられた講義でした。

「材料の表面を変えれば、世界が変わる!」工学研究院 教授 菊地竜也
参加生徒:1年生 1回目 34名/2回目 32名
私達の身の回りには様々な材料があり、その表面の構造をナノレベルで変化させることによって、今までになかった機能を実現させることができるようになります。菊地先生はこうした材料の性質を変化させる研究について、実際に表面を変え硬さが全く違う2つのアルミニウムの棒や、スライドを用いて説明してくれました。講義の後半では表面の構造を変化させたアルミニウムを使い、雨水での発電を目指す自身の研究内容について解説してくれました。参加した生徒は「同じアルミニウムでも表面の構造を変えるだけで、見た目が全く同じで硬さの違う棒や、油でさえくっついてしまう板を作ることができるというのが衝撃的でした。また、最後に見せていただいた菊地先生の元素コレクションにも、化学の世界への興味をとてもそそられました」との声を寄せました。
「新薬開発で動物も病気から救える時代に」獣医学研究院 教授 今内 覚
参加生徒:1年生 1回目 33名/2回目 32名
ペットとして多く飼われている犬や猫にもガンなど人間同様の病があるそうです。今内先生には、獣医学における病原体の免疫回避機構の解明に取り組む研究やワクチン開発に関する研究についての紹介とともに、医学と獣医学が連携することで人間の感染症の画期的な予防法や治療薬の開発につながっていく研究の広がりについてお話いただきました。また、アフリカ、南米等の海外における実地調査・研究についての具体的な取組に触れ、多様な視点から問題にアプローチしていく学問の魅力について講話いただきました。 大学での学びを模型を使ってわかりやすく紹介するだけでなく、研究によって助かった命(ペット)の事例などを実体験を交えながら説明され、獣医学研究のやりがいを感じる講義とおり、生徒の興味関心が高まる内容でした。

「新種のウイルスを見つける」人獣共通感染症国際共同研究所 准教授 松野啓太
参加生徒:1年生 1回目 30名/2回目 35名
ここ数年間で世界中でパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスを取り上げ、基本的なウイルスの構造や増殖のしくみについてレクチャーしてくれました。また、世界中には様々なウイルスが存在していることや、ウイルスの分類についても説明してくれました。講義の後半には、各自の端末を用いてウイルスの検索方法などを体験しました。松野先生も参加しているチームが行っている、新種ウイルスを発見するためのラボの様子や、フィールドワークについても写真などを見せながら教えてくれました。本校では医療系、薬学系への進学希望者が多く、近年大きな影響を与えた新型コロナウイルスなどのウイルス学には興味津々でした。生徒たちは実際にフィールドワークから新種のウイルスを発見するまでの道のりに、特に興味を示していたように見受けられました。
「心の哲学とAI」文学研究院 准教授 宮園健吾
参加生徒:1年生 1回目 31名/2回目 31名
「心の哲学とAI」をテーマに「AIは心を持つと言えるのだろうか」、「そもそも心を持つとはどのようなことか」、「AIの心は人間の心とどのように似ていて、どのように違うのか」等の問題ついて、心の哲学の基本的な概念をもとに解説してくださりました。AIは「心を持っているか」と質問されるとどのように答えるのか。動物が心を持っていると考えられるのはなぜか。人間には簡単に答えられる質問にAIが正しく答えられないのはどのような場合か、などについて最新の研究を紹介しながら心の本質に迫る講義をしてくださりました。講義を受けた生徒は「そもそも『心』とは何かを深く考えたことがなかったので、心の定義や哲学的な思考実験の方法、AIの特性など、大変興味深い内容でした。哲学と聞くと文系のイメージがありましたが、研究手法は理系の要素も多く含まれている学問分野であると感じました」と新たな発見をしていました。

「未来社会を考える―大学での学びと研究―」大学院教育推進機構 教授 宮本 淳
参加生徒:1年生 1回目 30名/2回目 29名
はじめに宮本先生の研究内容や大学での研究とはどのようなものかお話しいただきました。氷床の構造や成分などを分析し、その当時の環境などを解明していく研究をするようになった経緯や、研究するにあたって必要な力はどのようなものか、というお話がありました。また、現役の大学院生である名畑さんからもお話を伺い、具体的な研究の内容や苦労などをお話いただきました。生徒からは、「名畑さんの、理想的な選択方法ではなかったかもしれないが、今熱心に充実した研究を行えている、という話を聞いて、とても参考になった」との声も聞かれました。お二人の研究内容だけでなく、その研究に至った経緯なども聞くことができ、大学での研究について理解を深めることができました。文系、理系に関わらず、大学進学希望者全員にとって大変有意義な講義でした。

日時:2024年10月25日(金)
1回目:14:15ー15:05
2回目:15:15ー16:05
会場: 北海道札幌南高等学校
(広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門)
アカデミックファンタジスタとは?
北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度は北海道の高校等を対象に29名の教員が講義を実施しています。2024年度の参加教員はこちら。
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